松本珠奈さんインタビュー「女性の友だちを作ることが大切」

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2022シーズンまでサッカーチームY.S.C.C.に所属していた松本珠奈さんはJリーグではじめてトランスジェンダーをカムアウトした人になりました。

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珠奈さんは「アスレティックパフォーマンスコーチ」、パフォーマンスをあげるための指導者の方です。今回はカムアウトから仕事のことを中心に話を聞きました。


(聞き手、撮影:NAO)

ーー(乙女塾編集部、以下略)カミングアウトは大きな話題になりYahoo!や朝日新聞でも取り上げられました。
(松本珠奈、以下略)自分の中では大きく捉えていなかったので、ニュースが反響を呼んだのには驚きました。しかし、好意的な意見が多くてそれはうれしかったです。

またメッセージをSNSでもらうことも多くなりました。

同じようにトランスジェンダーやスポーツをやっている子供を持つ親たちから相談をもらうことが多いです。1人1人としっかり向き合いたいので(時間がかかっても)必ずきちんと返すようにしています。

ーーお仕事の話も教えてください。「アスレティックパフォーマンスコーチ」とはなんでしょうか?マッサージや整体をするわけではないですよね。
はい。アスリートのレベルを上げる仕事(体の使いこなし方)です。

ーー「足が速くなりたいんだけどどうしたらいいですか?」といったことでしょうか。

そういう質問を実際にトレーニング中にもらうことがありますが、「私もわからない」と答えています(笑)。

自分の何が課題でどこを直したいのか、より具体的で解像度の高い意見でなければいけないと思っています。

そうして出た課題は私も成長させてくれるものです。「選手の疑問は私の餌」といっています。名言でしょう(笑)。

そして、コーチの意見が絶対でもありません。私が与えているのは選択肢です。それをどう取り入れるのかは選手です。

これはトランスすることにおいても共通だと思っています。

ーー実際、メイクレッスンでも「かわいい」とか「自分の顔にコンプレックスがある」とまでは言える人がいるのですが、その先「あなたの考えるかわいいは何ですか?」「どこがどうコンプレックスでどうしたいですか?」と訊ねると答えに詰まる方がとても多いです。ですから、一緒に考えていくということがレッスンのねらいです。

トランスジェンダーの人たちはSNSを見ていると自分たちと同じレベルの人たちと仲良くする傾向があります。

しかし、私は女性の友だちを作ることが大事だと思っています。自然に溶け込むために、雑誌を読んでトレンドを知る事で自分の中にどう取り入れるかどうかを決めています。チャレンジするのが好きです。

そこにはやっぱりルックスの問題があって、女性的な見た目の方がRLEを過ごしやすいというのはあると思います。

ーー珠奈さんのファッションやメイクを見ているととても自然な雰囲気があるように思えます。

ありがとうございます。今日はプロの方に会うというので気合をいれました(笑)。

今回はくすみピンクのトーンで合わせたのですが、ブルーの日もあればグリーンの日もあります。ファッションとメイクをリンクさせたりして、なるべく違う自分を見つけるようにしています。

実は化粧品検定3級をもっています。もっとそういう勉強をしてメイクアップアーティストになることも興味があります。

ーーそれはとても素晴らしいことです、応援しています(編集部注釈:NAOは化粧品検定を指導するインストラクターの資格を保持しています)。失礼ながら、スポーツファッションが流行っているしジャージーにスニーカーなのかなと勝手に思っていました。

昔、そういう格好ばかりで自転車にのってどこにでも行きました。クラブチームのジャージのまま遠出して怒られたこともあります(笑)。

今は、フェミニンな恰好でヒールを履いて好きなファッションをしています。


身長が180cmほどあるのですが、背の高い女性やトランスジェンダーはヒールを履かないという方も多いと思います。ですが、私は積極的に高いヒールを履いています。今では10cmのヒールを履いて1日中歩いています。モデルみたいと言われることがありますが、将来的にはモデルにも挑戦してみたいと思っています。

海外ではサイズに困らなかったのですが、日本ではあまり売っているところがないので海外ファッションのお店は助かっています。

ーーそのポジティブなマインドはどこから生まれるのでしょうか?
アスリートも同じなのですが、日本人はメンタルの切り替え、オンオフの切り替えが下手だなと感じています。ドイツではプレーの失敗があってもオフは引きずらないでカラッとしています。

トランスジェンダーでも病んでいるツイートをしている人とても多いですよね。

私は(トランスジェンダーに対して)「自分の武器を磨け」とよく言っています。Y.S.C.C.は受け入れてくれたけどカミングアウトして受け入れられなかったら、違うチームへ行けばいいやという覚悟はありました。

それでも「何とかなる」と思えるのは自分のコーチングに自信があるからです。

日本に拠点を移した時も引っ越す半年前に決意して、ほぼ準備無しだったんです。

ーーありがとうございました。同じような言葉をトランスジェンダーで弁護士の仲岡さんもおっしゃっていました。「替えのきかない人材になれ」と。

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