『I Am Here~私たちはともに生きている』を観賞してきた

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新宿ダイアログCINEMAと銘打たれた映画『I Am Here~私たちはともに生きている』の上映会に行ってきました。当日は監督の浅沼智也さんのトークショー付きです。

この映画については既知ながらスケジュールが合わず、ようやくの視聴になりました。感想をつらつらと述べて行こうと思います。若干のネタバレを含みますので、もし気にされる方がいたらここで戻るボタンを押してくださいませ。

説明文に「日本の多様なトランスジェンダーの現状、そして性別が変更できる法律の要件のハードルの高さや日常生活で直面した問題を年代・職業関係なく様々な当事者が想いを語るドキュメンタリー作」という言葉通り、いろんな当事者の声を集めたドキュメンタリーになっています。

視聴前はどちらというかとトランスジェンダー当事者のリアルな生活や境遇に迫る日常物だと思っていました。その通り、最初は当事者の声で始まるのですが、特例法により性別を変更する際の話が入るあたりから、法律を絡めた話になっていきます。

映画では描かれていないのですが、特例法については2004年に成立する際に、100点満点ではないが法律を制定してそこから変更する派、最初から要件定義をもう少し理想的なものにしてから出す派と、2つの間で揺れていたそうです。そして、現実には法律を制定して3年を目途に要件を見直す、という形で成立に至りました。

しかし、(映画で語られている通り)実際の変更は2008年と5年間の月日がかかり、そして子供がいないことという性別変更の条件は「未成年の」子供がいないことと微修正されるにとどまっています。

性別変更の要件については、当事者間でも「(男性が好きなことが当然で)女性パートナーと子供がいるのはおかしい」「自分はこんなに苦労して女性になったのに」といった意見や「手術をしていないなんてありえない」という今のままでもいい派と「恋愛対象と性自認は違う」「子供は残したいので門戸は開いてほしい」といった変更希望派でわかれているのが実情かと思います。

このことについて議論したいわけではないので詳しくは省きますが、その前提を知った上で映画を見ると何かしらの背景が見えてくるかと思います。監督もそうした背景をにおわせる発言をトークショー等でしておりました。

この映画で“重い”のは差別と偏見に時代を生き抜いてきた活動家や大阪・梅田の老舗ニューハーフショーハウス、ジャック&ベティのママさんが“強く”生きろというメッセージを発していること、そして彼女・彼らが主張を続けてきたことです。

先人たちの努力によって“選択肢”を増やしてきたからこそ、映画で主に取り上げられている若いMtFやFtMトランスジェンダーが子供を育てる、結婚をする、パートナーを得る、あえて戸籍は変えないといった状況を享受できていることです。

どうしても若くて可愛い・カッコいい人たちの場合、埋没志向も強いでしょう。政治的な主張やLGBTQ+の活動や当事者コミュニティへの参加は控える場合も多くあると思います。実際、若い活動家というのはあまり聞きません。

ただ、法律制定でも活動された山本蘭さんの晩年の声というのは非常に重く、次の世代に私たちが託されたもの、そして更なる未来へ何かできることはあるんじゃないのかな、と少し考えさせられました。

なお、現在こちらの映画はオンラインでも視聴が可能です。

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ご興味を持たれた方はぜひ一度ご視聴なさってみてくださいませ。

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