ブスになる?胸ができる?「黄体ホルモン」治療における論文の今

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トランスジェンダーが通常女性ホルモンを行う場合はエストロゲン/エストラジオールが治療に使われることが多いです。そして、一部の方は黄体ホルモン(プロゲステロン)治療を併用しています。

しかし、この黄体ホルモンは「ブスホルモン」と呼ぶ人もいるぐらいで肌荒れ、乳輪などの色素沈着、太ったという方が多くでるなどデメリットも多く知られています。一方でメリットとして胸のサイズの増加、乳輪のサイズの女性化を体験される方もいて黄体ホルモンこそ大事だという人もいます。

さて実際はどうなのでしょうか?

2019年の海外の論文で「トランスジェンダーにおける治療でプロゲステロンの摂取は意外と重要なのではないか?」というものがあり注目を浴びています。

ジェリリン・プライヤー医師の論文

https://academic.oup.com/jcem/article/104/4/1181/5270376

によるとプライヤー医師はプロゲステロンをmtfトランスジェンダーの治療に使った際のメリット・デメリットをまとめています。

メリット

・CVDS(心血管疾患, 循環器病)と低骨密度および骨折の健康リスクの有病率を低下させる可能性が非常に高くなります。

・エストロゲンと抗アンドロゲン療法を併用すると、乳輪が小さく(2.5 cm以下、1インチ以下)男性的になり、乳房がタナーステージ3のままになるためです。プロゲステロンは、乳輪直径が3 cm以上に拡大する(7)ために必要です。

☞(トランスジェンダーの女性のCHTの胸の効果を評価するには不十分である)とし乳輪で比較しています

☞乳輪のサイズで比較したところ、エストロゲンだけでは小さく男性的、第二次性徴の5段階のうち3にまでしかいかないが、プロゲステロンを使えば4ないしは5にまで達するという話です。

・睡眠とほてりを改善します。

・5-alphaリダクターゼ酵素と結びつきます。

☞ジヒドロテストステロンへの変換を防ぎます。これはAGA治療薬(フィナステリドやデュタステリド)と同じ効果です。したがって禿防止になります。

デメリットについては論文によって違うようです。

 

上記の論文では

デメリット

・気分の変調はプラセボで有意差はない

・乳がんのリスクも有意差はない

としています。これは今までの業界をひっくり返すことでした。

過去の通説は以下です。

リチャード・カーティス医師の論文

https://tgforum.com/progesterone-for-breast-development/を翻訳しますと

ロンドンジェンダークリニックのリチャード・カーティス先生は、プロゲステロンを摂取するリスクは、プロゲステロンが乳房の発達とサイズに与える小さな貢献と比較して高すぎると主張していました。

カーティス医師の主張

・何故かと言うと、13.5歳に女性はタナーステージ5に到達するがその時点ではプロゲステロンの量が大して多いわけではない。トランスジェンダーはA~Bカップの乳房に通常の治療でなるが、それは女性がタナーステージ5で得られるものとそう変わらない。

・それ以上胸が欲しかったらパイを食べて太ったほうが良い。そのうえでシリコンバッグなどの豊胸手術を受けるべきだ。

・MtFトランスジェンダーの平均年齢は50歳だが女性は50歳で閉経する。つまり、その年齢でプロゲステロンがいるのだろうか。

・プロゲステロンは体重増加を引き起こす

・黄体ホルモンの効果である母乳はトランスジェンダーには必要がない

などといったものです。

これに対してはかねてから当事者からは「裏付ける根拠がない」などと反論があがっていたのですがようやく違った見解があがってきたというわけです。

注意!

トランスジェンダーに対する研究が進まないのは絶対数が足りていないということです。ですからこうした論文が出たことはとても貴重なことです。くれぐれも気を付けて欲しいのは、乙女塾では決して黄体ホルモンをすすめることはありません。きちんとした医療機関で見てもらうことをお勧めしております。だからxxさんがやっていてよかったからやろうという安易な治療になってしまうのは避けてください。誰しもが同じようにはなりません。一人一人違うのでその人にあった治療を行ってくださいね。

他に参考にしたリンク:

https://www.bmj.com/content/365/bmj.l1652/rr-2

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30608551

など

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