25日、性同一性障害の方が戸籍上の性別を変更するために、生殖能力をなくす手術を事実上の要件とした「性同一性障害特例法(2004年施行)」の規定が憲法に反するかどうかが争われた家事審判について、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は「違憲で無効」とする初判断を示しました。2019年の裁判では「(生殖能力要件に関し)現時点で合憲」としていましたが、社会情勢なども鑑み新しい司法判断を示した形になりました。
200404年施行の「性同一性障害特例法」では第三条にて性別変更の要件として
一 二十歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に子がいないこと。
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/15620030716111.htmより
と規定されていました。制定時から他条件も含めて当事者からの賛否が繰り広げられていました。
現在の規定では四、五を満たすためにFtMトランスジェンダーであれば卵巣の摘出手術、MtFトランスジェンダーであれば精巣の摘出手術、その後五を満たすためにMtFトランスジェンダーは性別適合手術(SRS)をする必要がありました。
今回の申立人は西日本在住で戸籍上は男性、性自認が女性のMtFトランスジェンダー当事者。上述のように、手術は過大な身体的、経済的負担を強いるとして「憲法が保障する個人の尊重や法の下の平等に反する」と主張していました。
具体的には、タイで手術をする場合には円安の状況もあり現在は300万前後の金銭的負担があること、心臓の持病などがある場合にSRSができなければ性別変更ができないことが当事者から変更を希望する声が上がっていました。
また、「子孫を諦めないといけない」ことは当事者からも賛否がありました。中には子供を持つために性別を変えず精子提供を受けたFtMや、精子凍結をして後に子を持ったMtFトランスジェンダーの件があり、中には裁判に発展するケースもありました。
第三条五の「変更後の性器部分に似た外観を持つ」(外観要件)との部分は差し戻し、高裁段階での再審理を求めることになりました。
つまり、本日現在では「違憲」であることは確定したが、条件をどうするかは、今後見直されるのではないかと思われます。さらには、女性トイレや更衣室、公衆浴場の問題など多々社会生活上の問題があるため、今後も議論は続くと考えられます。