未成年のトランスジェンダーに適応「思春期ブロッカー」って何?

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SNSで少し話題になったのが「思春期ブロッカー」という単語です。ホルモン治療は聞いたことがあるけれど、ブロッカーは聞いたことがないという方もいらっしゃると思います。

では、思春期ブロッカーとは何でしょうか?

今回はGID学会教育系コーディネーターであり実際に同内容を学習した私が解説をしていきます。

思春期ブロッカーとは?

ユース層へのトランスジェンダーへの治療の場合、日本精神神経学会のガイドラインでは、二次性徴の発来に著しい違和感を有する者に(女性・男性ホルモン治療を行うのでなく)第二次性徴を抑えるための「思春期ブロッカー治療」を行うことが検討材料になります。

思春期ブロッカーは正式名称を「GnRHアゴニスト」といいます。GnRHはGonadotropin releasing hormoneの略です。正式なガイドラインに沿いますとTanner2期(第二次性徴の初期)以降から15歳までは思春期ブロッカーのみが治療の選択肢になります。ただし、12歳歳未満の場合には「特に慎重に適応を検討する」としています。

15歳から18歳の間は、保護者、医療関係者の同意があればホルモン治療を思春期ブロッカーに変えて受けることができます。また、第二次性徴が進みTanner4期(第二次性徴がある程度進んだ状態)になると第二次性徴を止める目的で使うことはできません。FtMの月経停止、MtFのテストステロン抑制には使うことができます。

詳しくは自由が丘MCクリニックのホームページをご覧ください。

また、Tannerって何という人は以下の図、またはたなか成長クリニックをご覧ください。

女性のTanner1-5期

男性のTanner1-5期

思春期ブロッカーの効果


トランスジェンダー男性に対するGnRHの機能説明図 https://www.mdpi.com/2077-0383/12/3/1008より

GnRHアゴニストを投与することで視床下部へ働きかけ性腺刺激ホルモンの分泌を抑えることが目的です。第二次性徴を一時的に抑制することができます。「一時的に」というところがポイントで、強い薬なので使用期間は「2年程度をめど」と決まっており、その後はホルモン治療へ移行するか、薬を使った治療を辞めるかの2択を迫られることになります。

つまり、可逆的な薬なので使用をやめれば第二次性徴が始まります。それゆえ、後年自分はトランスジェンダーではなかったとして治療をやめることができたり時間の猶予を増やすことができます。

思春期ブロッカーの注意点

注意したいのは、ブロッカーはホルモン治療へ移行する前の薬です。(読者の情報では海外ではブロッカーとホルモン療法を併用しながら徐々に移行するケースがあるそうです)、また、強い薬であることです。

トランスジェンダー以外にも女性に対しての偽閉経療法として子宮内膜症の方、前立腺がんの治療などに使われたりしています。ホルモンが抑制されるということは、子供であれば後年骨の発達に問題が出るケースがあること、大人の女性に対しては更年期障害のような症状が起こることが副作用として言われています。

もう1つはTanner2期以上、つまり第二次性徴が少し始まった段階でないと適応されないこと、思春期ブロッカーを使っても身長が伸びるを止めることはできないとされています。こうした点は、少しでも男性化を抑えたいMtFトランスジェンダーにとっては気にする方もいるかもしれません。

なお、思春期ブロッカーに変えてTanner2から3期のMtFであればプロゲスチン(黄体ホルモン類似物)か抗アンドロゲン剤を使用。FTM には、女性としての二次性徴の抑制および月経の停止を目的に、プロゲスチンを使用する場合があります。

治療の課題としては、ホルモン治療をしている病院も多くない中で、思春期ブロッカーには対応している病院はさらに少なく価格も高いため、治療に対しての難易度が高いことです。ユース層の実例に照らし合わせると親にカミングアウトして経済的な援助をもらい、交通費や時間をかけて病院へいくことは本当にレアなケースです。

実際にブロッカーを使って治療したというトランスジェンダーに会うことは稀です。しかし、若年から行うということは早期に埋没が可能になりますので、私たち当事者ですら可視化できていない側面もあるかと思います。

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