高齢での性別適合手術(後編)~家族へのカムアウト、そして…

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​6月に行われたSRS交流会で登壇し自らの体験談を話してくださった古田ヨシミさん。

60歳という年齢で性別適合手術を決意し、一度は病院から検査でNGをもらった彼女が二度目に渡航をしてSRSを終えるまでをレポートします。

(前編)

(中編)

今回は後編。ガモン病院で手術後、家族には「出張」としか伝えておらず秘密にしていたそう。カミングアウトはするの?家族にはばれないの?ぜひ最後までお楽しみください。
(インタビュワー:ふみか、取材日:2022年7月15日)

ーー(乙女塾編集部、以下略)家族に内緒のまま帰国されたそうですが、その後どうされたのでしょうか?
(ヨシミ、以下略)2回目の渡航についても、家族には仕事の出張としか伝えていませんでした。

帰国後、経過の報告を性別移行について相談に乗ってもらった、スザンヌみさきさんや友人に行いました。

ーー家族には内緒だったとしても、手術の経過を報告できる方が日本にいるというのは心強かったですね。お仕事の方は大丈夫でしたか?
​個人事業主だったこともあり、実作業についての調整はききました。タイにいる期間はメールをやり取りする程度。ガモン病院で入院している時から折を見てパソコンを開いてメールは確認していましたけどね。

手術後は体力回復に専念できたのですが、ひたすら暇でしたね。

手術後の2週間の期間どの様に過ごすのかは結構大事だと思います。私は日本にいるときから海外ドラマを見るのが好きだったので、なんとか乗り越えることができました。ゲームが趣味の方は、ゲームをして過ごすのも良いと思います。

ーー帰国は大丈夫でしたか?車椅子で飛行場まで移動する方もいらっしゃるそうですが…。
​車椅子を使うことなく、歩いて帰国できました。関西国際空港から名古屋の自宅までも、新幹線と地下鉄を乗り継いで帰りました。

さすがにタクシーを使えば良かったと後悔しましたね。

帰国して1週間後に仕事で中国に出張する事になったのですが、その出張もなんとかこなせました。タイSRSガイドセンターの加地さんには「責任を持てない」と止められましたが。

ーー手術直後には数百メートル歩くのもやっとだったのに、3週間程度で海外出張されるまで復活されたのですね。帰国後の経過を教えていただけますか?生活にどの様な変化が出てきたでしょうか?
​手術により見た目が変わるわけではないので、手術直後は手術前と変わらず男性としての生活を送っていました。

ただ、そこからの身体の変化は大きかったです。もしかしたら睾丸摘出やホルモンの効果が一気に出てきたのかもしれません。

男性トイレから出てきたときにすれ違う人に驚かれたり、トイレの場所を訪ねたら女性トイレに案内されるようになってきました。

乙女塾のボイストレーニングは、2017年の12月から通っていて、さつきさんには1回目と2回目のタイ渡航の話はしたのですが、レッスンのたびに、さつきさんから「変化が大きいね」とコメントいただいたり、継続して通っている整体師のかたからも1年目くらいで「筋肉の質が変わってきた」とコメントをもらったことを覚えています。

同時に、普通に歩いていても息切れをする様になったり、昔持てた荷物が持てなくなったり、ペットボトルの蓋を昔のように開けることができなくなったりという変化を感じました。

男性時代の筋肉が落ちてった時期でもあったのかなと思います。

ーー見た目についても大きく変化されたという事ですよね。筋肉の低下はどの様に向き合ったのでしょうか。またご家族からは見た目の変化について何か言われたりはしなかったですか?

​筋肉の低下については、日常生活で意識して筋肉を使うように心がけることで、日常生活に支障が出ないくらいには回復しました。

家族については、見た目というよりは、干してあるスカートが見つかったことでカミングアウトする事になりました(笑)。

私は在宅で仕事をして、パートナーは日中家の外で仕事をしていたことから、衣類の洗濯は昼間自分で行っていました。それが、見つかってしまったわけです。

見つかったタイミングでは、どの様に説明しようか非常に不安でした。ただ、今までの経緯の説明を淡々と聞いてもらえて、結果としては理解して受けてもらえたので、とても感謝しています。

「外出の際に家からスカートをはいていかないこと」「メイクをした状態で家から外出しないこと」を条件に今まで通りの生活が続けられました。

ーー既婚者の場合のカミングアウトって大きなトラブルになることが多いと聞きます。きちんと理解が得られたのは何でだったのでしょうか?
​パートナーとの信頼関係が大きな要素だったと考えています。

普段から協力して、子供のこと親の介護などのことを一緒に乗り越えてきたこと、これが大きな信頼関係を築けていたのだな思っています。

ーーSRSを受けるにはかなり厳しい年齢で違和感に気づき、そこから一気に移行を進め現在は違和感無く前向き生活ができているお話しをうかがえました。性別違和の解消も含め、いろいろなトラブルを乗り越えるのに大事だと思うことは何でしょうか?
手術後の生活での不安要素をなくすために、次の4つのことが大事だと思っています。

1. 健康
2. お金と仕事
3. 身体の変化への覚悟
4. 理解あるパートナー

手術後も生活を続けていくとこを考えると、仕事と収入をどの様に確保していくかを考える必要があります。私の場合はフリーランスだったこともあって、複数の収入源を抑えることを心がけていました。それが実現できたことで、安心感を得ました。

ーー会社務めの方にもアドバイスをいただけますか?

知り合いの会社勤めの方は、手術後の職場復帰について会社と交渉を詰めてから施術した方もいらっしゃいましたが、その人の状況に合わせて、手術後にも仕事を継続できる様にしていけるといいですよね。

また、保険によっては手術費用の一部に保険が適用されたりもするので保険選びも重要です。

健康である事も大事ですよね。私の場合は血管の問題で手術ができないという診断が1度下りたわけですが、病気によっては手術を受けたくても受けられません。

実は、小学校の頃は身体が弱くて、1年間入院生活を送ったこともあったんです。高校の時から毎年スキーに行くようになりました。

社会人となり仕事で重い物を持たないといけない状況になったことで筋トレをする様になったり、毎日、3~4kmの道のりを歩いて通わないといけないこともありました。

さらには、介護の仕事での介助をスムーズに行うために古武術を始めたりもしました。映画 shall we danceに影響をうけて社交ダンスを始めたりもしました。

今から考えると、いろいろな要素で身体を鍛える事ができたことで、なんとか手術を受けることができる状態になったのだなと思っています。

ーー最後に、現在SRSを考えている方へのメッセージがありましたらお願いします
​手術をするという事は身体に負荷もかかるし、生活に大きな変化をもたらします。

乙女塾を探されて、この記事を読まれているということで、それなりの覚悟を持って手術を決意されている方も多くいらっしゃると思いますが、私の経験を元に、手術の際に起こりうるリスクの理解と、その対処の一例を知っていただき、対策のお役に立てればと思います。

ーーお話聞けて良かったです、ありがとうございました。

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