持田製薬の発表によると2022年5月に女性ホルモン製剤の販売が中止となるようです。
この件について、ボイス担当の西原さつき、また、多くのメンバーからの情報が寄せられたのでまとめてみました。
トランスジェンダーとホルモン注射による治療
トランスジェンダーの方はトランス(性別移行)にともない、性ホルモンの摂取治療を行うことが多いです。錠剤、塗り薬、貼り薬と色々な方法がある中で、肝臓への負担が少ない「注射」による治療は一般的にも広く行われています。
MtFトランスジェンダーの方の場合には、女性ホルモンの注射を受けます。女性ホルモンには「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」の2種類があり、卵胞ホルモンだけを使用する方法、あるいは黄体ホルモンと卵胞ホルモンの2つを使用する方法があります。
代替えはあるの?
今回製造中止が発表されたのは複数の製剤になります。
もっとも代表的と思われるペラニン・デポーは持続性卵胞ホルモン製剤です。発表は2021年8月にあり、すでに2022年3から5月にかけて販売中止を予定しております。
代替はプロギノン・デポー(富士製薬)になります。ただし、プロギノン・デポーには5mgがありません。
リンク:https://med.mochida.co.jp/etc/img/pl-d202109.pdf
持田製薬は、2023年9月に黄体ホルモン製剤のプロゲホルモン筋注も販売を中止することも発表しています。
こちらは同一の有効成分の代替品はありませんが、この文書で同一の効能・効果を有する内用剤として富士製薬のメドロキシプロゲステロン酢酸エステル錠(日局メドロキシプロゲステロン酢酸エステル)、富士製薬のノアルテン錠 (日局ノルエチステロン))が紹介されています。
リンク:https://med.mochida.co.jp/etc/img/prg202109.pdf
最後に卵胞・黄体ホルモンを一度にとれるルテス・デポー注も2022年9月に販売中止が予定されております。こちらも同一有効成分の代替はありません。文書内で同一の効能・効果を有する内用剤として紹介されているのはあすか製薬のプラノバール配合錠(日局ノルゲストレル+日局エチニルエストラジオール))です。
リンク:https://med.mochida.co.jp/etc/img/lts-d202109.pdf
つまり、卵胞ホルモン、黄体ホルモン、卵胞と黄体ホルモンのミックス製剤すべての製造が中止になります。
問題点は?
1つは血栓症です。女性ホルモン使用の際には血栓ができてしまうことがあること、そのために血液検査などでチェックをすることが知られているかと思います。
論文レビューサイト「ホルモン療法を受けているトランスジェンダーの成人における静脈血栓塞栓症のリスクの管理」では、血栓症を防ぐには「エチニルエストラジオールの使用を避けるべきです」とあります。しかし、ルテス・デポー代替剤として提案されているプラバノール配合錠はエチニルエストラジオールを含んでいます。
また、黄体ホルモンの代替え剤として提案されているノルエチステロン(別名:ノルエチンドロン)ですが、副作用だけは確認しておいた方が良いと思います。
リンク:Norethindrone side effects(ノルエチンドロン副作用)でGoogle検索
いずれにしても、かかりつけの医師の方としっかりとしたご相談の上、代替の治療をご検討くださいね。