タレントのryuchellさんが妻pecoさんとの関係性を夫婦から「人生のパートナー」とすることを自身のInstagramに綴られて話題になっています。
投稿には「”夫”としての生き方についてお話しさせていただく機会が増えていく中で、”本当の自分”と、”本当の自分を隠すryuchell”との間に、少しずつ溝ができてしまいました」「僕には隠していた部分がありました。その僕を信じて応援してくださっていた方、本当に申し訳ありません」と自身の想いを書かれたことからジェンダーの問題、その中でもMtFトランスジェンダーに関する話なのではないかと読み解く人が多いようです。また、その反応は様々あります。
この記事では、今回の一件から乙女塾のメンバー、またはパートナー、そして周囲の方々の体験談から「結婚後にトランスジェンダーであることを告白する」ケースについて実際の例をいくつかご紹介いたします。
MtFトランスジェンダーの恋愛対象について
MtFトランスジェンダーの恋愛対象については、男性のみであると思われているケースが多いです。しかし、実態はその限りではありません。
これは過去に「私が「自分らしく」が大事だなと思うようになった理由」で記載いたしましたが、トランスジェンダーの方や女装さん、ニューハーフさんの世界でも、恋愛対象の男性に奉仕をするという風潮があったようです。それはまるで、鉄の掟のように守られていたようです。
しかし、2010年代初期に訪れた「男の娘ブーム」以降は(そのブームが良かったか悪かったかは別として)恋愛対象は女性の方でもトランス(性別移行)を行うという人が多く見受けられるようになりました。運営部の調べでは、むしろ恋愛対象が男性の方よりも、女性を恋愛対象をする方のほうが多い印象です。
彼女達は「MtFレズビアン」と自称、他称されたりしています。どのようなケースがあるのでしょうか。
例えば、既に結婚している人達にもそういった方もいらっしゃいます。中には必ずしも恋愛対象が女性だけではなく男性にも恋愛感情を抱くというケースもあります。女性ホルモン治療を続けていくうちに変わるという人も…。
または今からほんの十数年前の時代感覚がトランス(性移行)を許さなかったのでそれをを諦めて通常の男性になろうと頑張ってみた、というケースも多く耳にします。その時に恋愛していた相手は女性のことも多いようです。しかし、年齢を重ねるにつれて「トランスへの想いをどうしても止められない」と行動に移られる方もいます。
このあたりは「「時代が許さなかった」数十年前のメディアでのトランスジェンダー事情を振り返る」の記事をお読みください。
結婚後にトランスジェンダーを告白すること
実際に乙女塾メンバー、パートナーの中にも結婚を経験している者や、女性の方と一緒に暮らしているケースは少なくありません。
そして、結婚後(付き合った後)にトランスジェンダーであることを告白した場合の、その妻(彼女)の反応は様々なようです。
多い反応の一つに「きっぱりと離婚する・別れる」というケースです。やはりお互いに女性化する姿は見せたくない(見たくない)という理由が多いようです。妻(彼女)側からはトランス=自分の夫が他の男性と恋愛をしたり、深い関係性を持つことに対して拒絶されるケースがあるようです。難しい問題ですよね。
ただし、離婚したからといって必ずしも仲が悪いわけではないようです。定期的に会って女友達になるケース、子供と会う時だけは男装して男に戻るケースなど実態は様々なようです。
別のケースとしては「離婚をするが一緒に住む、またはパートナーとして暮らす」という選択肢です。比較的最近はよく見るケースです。離婚する理由としては、婚姻関係がある状態ではSRSを終えても戸籍変更が行えない点から婚姻関係を解消するようです。または夫婦というよりと、人としてのパートナーという関係だったり、元奥さん側のほうが男役っぽいロールを演じたりと様々です。
最後は婚姻関係を続けるケースです。この場合は事態として女・女というお母さんが二人いるという状態になりますが、元・夫側はSRSを終えても戸籍変更をすることができません。
法律の問題が結婚・離婚を決めるケースも
ここで何度か「戸籍変更」という単語を挙げました。
現在の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律では18歳未満(成人ではない)の子供がいるケース、婚姻関係がある場合は、性別の戸籍変更ができないという決まりがあります。
そこで女性へ戸籍変更をするために、仲は良いが妻(彼女)と別れるケースもあります。また、子供が欲しい場合にはMtFトランスジェンダー当事者側が離婚後に戸籍変更。その後、冷凍精子を使い元・妻との後に子供を作るなどの策をとっているケースもあります。しかし、そういった方法では親子関係が認められず現在裁判になっている場合もあります。
いずれにしてもこういった問題に関しては、法律が時代に追い付いていないのかもしれません。同性婚についての裁判が行われていたり、血縁関係はあるのにも関わらず法律的に子供と認められないという状況は法改正を望む声も挙がっています。
MtFトランスジェンダーが女性パートナーと共に生きるために
上記のような法律・戸籍の問題を抜きにしてMtFトランスジェンダー当事者が、女性パートナーとうまくやっていく秘訣はなんでしょうか?
乙女塾内部のメンバーや運営部で話題に上がったのは「仕事をきちんとやった上で」「家事も1人で全部こなせる」が共通点としてあがりました。
世間的にはこうした役割をそれぞれ「男性的」「女性的」と分けたりします。しかしそれらは今の時代、得意な方が分担すれば良いよね、2人で協力していこうねという考え方もあります。「家族」という形は「恋人」と違ってそこまで性を感じる必要が無いという意見も。
実は乙女塾へカップルや夫婦で通われている方々は珍しくありません。最初は妻や彼女さんの応援を受けて性別移行を始めたはずの(元)旦那さんが、気が付けば女子力を身に付けていかれます。そうすると、相手側も負けじと2人で切磋琢磨されることもあったりします。
色んな家族や絆の在り方、選択肢が増えつつある世の中です。今回の一連の流れを受けて、乙女塾運営部でも色んな意見が出てきたので今回はシェアさせて頂きました。
西原さつきはryuchellさんとモンスターストライクのPRイベントの際に共演をさせて頂いております。乙女塾としても「新しい形の家族」がうまくいくことを応援しております。
乙女塾パートナーのみなみは今回のryuchell さんの一件から「男女のジェンダーロール」の感覚が世代によってずれがあるのではないか?と考察しています。次回はそんな「昭和の男女」「令和の男女」についてお届けします。