「よし、これから女の子として生きていこう」と覚悟をきめたとき、やるべきコトはいっぱいありますよね。
治療の中で大きいのはホルモン補充療法(HRT)と性別適合手術(SRS)と言われています。
ところが、SRSの本や体験談サイトはそこそもあるけど、意外と性ホルモンについての体験談は少ないのです。
でも人の性別を決める要素の大きな部分をしめてるのが、この性ホルモンなのです。今回はトランスジェンダーのホルモンについて、様々な文献や論文を読み込んでの基礎知識、それから体験者の声を中心にまとめてみました。
ホルモンってなに?
ホルモンは脳や特定の器官から出る体内物質です。現在見つかってるだけで100種類以上もあると言われてますが、そのメカニズムは、まだ明確にわかっていないようです。
そもそも、人間はお腹の中で、まず女性器が形作られ、その後、Y染色体による男性ホルモンのシャワーを浴びることでそれが男性器に変化します。その為、その時の男性ホルモンや女性ホルモンの影響によって、外性器や脳の構造に性のグラデーションが起きると考えられています。
このような男女の性差を決める性ホルモンとしては、次のものがあります。
男子ホルモン
・テストステロン
女性ホルモン
・エストロゲン(卵胞ホルモン)
・プロゲステロン(黄体ホルモン)
つまり、FtMトランスジェンダーならばテストステロンを、MtFトランスジェンダーならば女性ホルモンを摂取することが多いです。(リスクも大きいため摂らない人もいます。ホルモン治療をすることがえらいことではございません)
ホルモンはどんな影響があるの?
ホルモンを摂取しない場合、通常は生まれてきた性別に沿った第二次性徴を迎えます。つまり、そのまま男性ならば男性化、女性ならば女性化が進行していきます。
分かりやすいものですと、男性ならば髭が生え、骨格ががっちりとして、体毛が濃くなるといった現象です。
そこで、トランスジェンダーの場合は望む性別に沿った性ホルモンを摂取します。そうすることで、もともとの性別の性徴を止めて、希望の性別に沿うような変化を生むことを目指します。
それぞれのホルモンが持つ特徴は下記のようなものです。
男性ホルモンの特徴
・筋肉量を増やす(がっちりする)
・性欲を起こす
・攻撃性を持つ
・集中力がでる
・やる気がみなぎる
女性ホルモンの特徴
・女性らしい丸みのある体形をつくる(太る)
・肌や髪を美しくする
・精神状態の安定化
・血管を太く柔らかくする
上記はあくまで性ホルモンの特徴ですが、実際に性ホルモンを摂取した体験談でもよく耳にする内容でもあります。
トランスジェンダーとホルモン補充療法(HRT)
ホルモンの摂取方法
ホルモンの接種方法には4つの方法が考えられます。
・錠剤
・パッチ
・ジェル
・注射(筋肉注射なので痛い)
基本的には錠剤か注射で行う方が多く、パッチやジェルは少数派です。一般的には錠剤、パッチより注射のほうが肝臓への負担が少ないと言われています。
病院(ジェンダークリニックや婦人科など)での投与は、性同一性障害の診断書が必要です。診断書があっても、自費治療になります。その為、価格やアンプル数(量)は病院によって大きな差があります。また、投与量すらも自己判断で決める必要がある病院もあります。
MtFトランスジェンダーであれば、通常、毎週、または隔週でエストロゲンを1A〜2A(アンプル)が多いです。併せて、男性ホルモン抑制効果を期待して抗男性ホルモンを投薬するもの、黄体ホルモン(プロゲステロン)を接種することで疑似的な生理周期にそったホルモン分泌の変化を作り出す人もいます。
摂取するホルモン量が多ければ治療効果も上がると考えがちで、ついつい多くしてしまう方が多いのですがそれは間違いです。肝臓への負担があがるので気を付けましょう。
また、SRSを行って戸籍変更されていれば、保険治療になる場合もあります。
ジェンダークリニックに通って診断書を摂取してからホルモン療法を開始することを正規ルートと呼びます。一方で、自己判断で診断書なく自己輸入などでホルモンの錠剤を取り寄せ摂取する人たちもいます。フライングホルモン(フラホル)と呼びます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ホルモンの投与による身体・精神の変化
FtMトランスジェンダーに対するテストステロンの投与は、比較的短期間で効果があると言われています。例えば、声が低く声変わりをする、体毛が濃くなる、人によっては髭も生えるといった変化があります。
MtFトランスジェンダーに対してはエストロゲンの投与が一般的です。効果としては、肌がすべすべになった、胸が膨らんできた、脂肪がついてきたといった外見的な変化。それから、涙もろくなった、体温調整が聞きづらくなったなど内面的な変化まで、様々な変化を体験する声をよく耳にします。
一方で、MtFトランスジェンダーは満足する効果を得るまでに時間がかかり、エストロゲン(卵胞ホルモン)を投与しても、第二次性徴で変化してしまった声や骨格、体毛はそのままです。つまり、声は高くならず、体毛は脱毛処理する必要があります。
治療ができない思春期の子どもには「第二次性徴遮断薬」といわれる薬をつかうこともあります。これは一時的に第二次性徴を止めて、成人になった後で望む性別への治療を行うことが一般的と言われています。
ホルモン療法は血栓などのリスクがあるものです。必ずお医者様の管理の元で血液検査などを行うことを推奨しております。
女性ホルモンと副作用
ホルモン補充療法(HRT)で、気を付けないといけないのは血栓症と肝臓の数値(Dダイマー)です。
特に血栓症は錠剤の場合に多く、血液をさらさらにするサプリメントなどを一緒にとることが推奨されます。また、注射の場合はプラセンタを同時に注射することで肝臓保護をねらう場合もあります。
その他、つぎのような副作用があります。
ホルモンに関しては一度摂取すると「不可逆的な物」とされています。例えば一度おっぱいができれば元には戻りません。治療開始半年を超えると、性障害などは回復しないと考えられています。
その為、治療開始にはきちんとした診断と覚悟の上行う必要があります。
女性ホルモン療法の副作用例
・性欲の減退
・勃起・射精障害、無精子症
・心不全、心筋梗塞・脳梗塞
・女性化乳房症
・体重の増化(腰回りへの脂肪沈着)
・抑うつ的な気分や情緒不安定
・自律神経障害(体温調整機能の低下など)
女性ホルモンとメンタル
男性ホルモンは摂取することでメンタル面はポジティブな影響が大きいです。それゆえ女性やMtFトランスジェンダーでも男性ホルモンを少量摂取した方が良いという医師もいます。
女性ホルモンの副作用でもっともやっかいなものは、精神面への影響です。
女性ホルモンの特徴として「精神状態の安定化」と記載いたしました。一方で、ホルモン量は一定の周期があります。つまり、MtFトランスジェンダーの場合、ホルモンが切れてくる注射前になると、女性の月経前不快気分障害(PMDD)に近い精神不安定を経験することがあります。これらの症状を「ホル切れ」と呼ぶ人も多いです。
また、プロゲステロン(黄体ホルモン)は乳汁の分泌増大、乳輪や乳房に効果があるという論文があります。一方で、とてもメンタルを不安定にし、自律神経を飛ばす、肌荒れを起こすなどネガティブな面も多く報告されています。
ちなみに、かつてはエストロゲンと併用しても特段の効果がないと主張する医師が多く存在しましたが、トランスジェンダー当事者の間で反論が起こり、現在は効果があるという論文が登場するという経緯になっています。
MtFトランスジェンダーのメンタル面の悪化は自身の境遇や状況によっては自傷や希死念慮を伴うことも多く問題になっています。きちんとした精神科医や婦人科の指導を受けることを推奨しております。
また、自律神経が不安定になる現象は、漢方薬(加味消散湯や命の母)、ヨガやウォーキングといったスポーツが効果的といわれているので、積極的に取り入れてみるのもありかもしれません。