弁護士仲岡しゅんに聞く「替えが利かない人間になれ」

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MtFトランスジェンダーで弁護士として活躍している仲岡しゅんをご存じだろうか。

杉本彩を彷彿とさせるかっこいい大人の女性である彼女に話を聞いた。

ーー弁護士になった理由を教えてくださいますか?

トランスジェンダーには就職差別があると思います。そんな中で、腕一本でできる仕事と考えて、弁護士を目指しました。また、学んだことを机上の学問だけで終わらせるのではなく、現実社会に反映させられる仕事、特に社会的少数者などの力になれる仕事ができれば良いなと。

ーーご自身がトランスジェンダーだと気が付いたのはいつ頃でしょうか?

子供のころは情報が少なく「オカマ」か「変態」かという時代でしたから、自分の本心を隠しながら生きてきました。私の場合、「女の子らしくなりたい」という感じではなく、まず女性が性的指向の対象ではありませんでした。かといって、ゲイかというと何か違う。「自分はなんなんだろう?」と思っていた時に友達に誘われたトランスジェンダー交流会に行って、自分の本来の気持ちを肯定できるようになりました。

ーーそのころと今の写真を拝見すると大きく変わっているように思います。どのようにトランスを進めていったのでしょうか?

すぐにガラリと変えるのではなく、2、3年の間に段階的に行いました。

髪の毛を少しずつ伸ばす、化粧っ気を出す、ひげを脱毛する、服装を中性的にするとか戦略的にですね(笑)。

少しずつ変化すると、意外と周囲から強い反発がなくできました。

ーー司法試験に合格すると、弁護士になるために「司法修習」があります。トランスとして苦労はありましたか?

司法修習を受ける際の健康状況申告書に「性同一性障害」と記載したら配慮されました。女性合格者の会にも普通に出席しましたし、司法修習の寮も女性用フロアがあてがわれて埋没していきました。

ただ、司法試験の受験の際は、受験生はみなナーバスなので、女性にも男性にも気をつかい、トイレで不要な混乱をもたらさないよう、隣のビルまで行って多目的トイレをつかっていました。

また、弁護士業界というのは、外部から思われているより保守的ですし、競争の厳しい社会です。弁護士の中にも、私のことを白い目で見ている人がいることは知っていますが、その中で生き抜いていくために今も必死ですよ。弁護士を目指すことはおすすめしません。(笑)

ーーしゅんさんは「女性だろうがトランス女性だろうが自立するべき」とおっしゃいます。それは何故でしょうか?

日本の女性は小柄で細くてかわいくあろうとしがちですが、女だからといって、「カワイイ信仰」というのはどうなの?と。あくまで私の好みの問題ですが、私は自分らしく自立した女性像を目指したいと思います。

また経済的な自立に関して言うと、トランスジェンダーは就職の面やパワハラなどで差別を受けることもしばしばです。そうした現実があること自体は不当なのですが、そうはいっても、そういう現実の中で私たちは生きていく必要があります。トランスジェンダーであったとしても自立して生きていく術を身につけていかなければならないな、と。

このことは女性でも同様です。現にある差別や不平等は社会問題・人権問題として改善していく必要がありますが、収入を男性に頼り切ってしまうと、いざというときに非常に困るのです。

――では具体的にどのような方法がオススメとお考えでしょうか?
例えば、エンジニアやIT系の技術者だとか、あるいは何か資格を持っていれば、腕一本で生きていけますよね。私は弁護士になる前に、ヘルパーや学童保育の先生を経験していますが、自分の姿や性別がどうであれ、その職場で必要な人間になろうと考えていました。

トランスジェンダーであったとしても必要とされる何かを持っておけば、そう簡単に排除されたりしません。どんな職業であっても、「替えが利かない人間になれ」とこれからトランスする後輩には伝えたいですね。

ーートランスジェンダーって二極化の傾向があるのではないか?と思います。学歴や行動力があって失敗をおそれずにがんがんトランスを進めて自分自身で仕事のスキルを身に着けるタイプ。もう1つが、自己肯定感が低く自分なんて…となって学校や仕事にも積極的になれずふさぎ込んでしまう人です。しゅんさんは前者のほうへ思えるのですが…。

そのようなイメージを持たれることが多いんですが、実は私は自己肯定感が低いんですね。子供の頃はアトピー性皮膚炎で肌トラブルもあり、また、男の子とも女の子ともなじめなかったので、学校でもあまり友達がいなかったんです。今風に言うと、いわゆる「陰キャ」というやつです。子どもの頃に形成された自己像って、なかなか拭えないですよね。

司法試験に合格すると調子に乗る人もいますが、私はそうはなれませんでした。試験に受かったとは言っても、その次に待っているのは、周囲もみんな司法試験に受かっていることが前提の世界ですから、「所詮は自分なんて…」とか考えてしまう。

依頼者のためにたたかうのが仕事ですから、仕事上は努めてタフに振舞っていますが、時々「私ってダメなやつだな…」と一人反省会を開くことがあります。

ーー(続く)

後編は仲岡しゅん流、自己肯定感と自己実現の方法をうかがう!こうご期待。

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