7月31日にNHKで放映されました、アニメ『ハートカクテル カラフル』第6話「パーフェクト・ガールフレンド」をご覧になられた方いらっしゃいますでしょうか?
あらすじ:
真夏のプールサイドで入道雲を見上げる2人。一見カップルに見えるが、実は幼なじみ。子どものころからスカートをはき、ビキニを美しく着こなす秀二郎は、隣で寝転ぶ慶一に思いを寄せている。しかし、慶一は会社の後輩と結婚してしまい…。 #ハートカクテルカラフル #亀梨和也 #満島ひかり #わたせせいぞうa href=”https://www.nhk.jp/p/ts/PYL2917V5V/episode/te/RPQ7K9W6WK/”>第6話 パーフェクト・ガールフレンド(NHK公式サイト)より
あらすじで語られている通り、主人公はトランスジェンダーの女性でした。その心情が深く伝わり、何日たっても心の揺れがおさまりません。時間はわずか4分40秒。文字数にしておよそ630字の短編ですが、完全にノックアウトされてしまいました。
NHKはこれまで、「女子的生活」を始め、セクシャルマイノリティを扱った秀逸な番組を多数放送しています。印象に残っている過去の作品を含め、なぜ心に響くのか考えてみたいと思います。
『ハートカクテル カラフル』概要
原作の『ハートカクテル』はわたせせいぞう作の漫画で1983年から1989年にかけて『モーニング』(講談社)にて連載されました。1986年にテレビアニメ化、1987年にはテレビドラマ化されています。
今年3月、久々の新作として「春編」がNHK総合で放送されました、それを受けて、7月末から「夏編」が放送されています。セル画数が少なく動きも少ないリミテッドアニメとして作られた短編ラブソトーリーです。
第6話「パーフェクト・ガールフレンド」
夏編第6話「パーフェクト・ガールフレンド」はトランス女性の淡い恋物語です。ストーリーに事件性はなく、ナチュラルでフラットな演出。冒頭とエンディングをリンクさせるオーソドックスな構成。変わったことは何もない自然でリアルな作品です。しかしヒロインの心情が重たく響きます。
【ハートカクテル カラフル】
新作です。
今回も”現代の多様な恋”を、わたせせいぞうが四季の美しい風景とともにお届けします。
今回は「第6話 パーフェクト・ガールフレンド」から。夏です。#亀梨和也#満島ひかり#奥田民義
31(月)から5夜連続
夜 11:45[総合]https://t.co/rEflInM5Gi pic.twitter.com/L3j6Z5uNMj— NHK広報 (@NHK_PR) July 30, 2023
私は放送関係の仕事もしていたのでNHKの指導を度々受けているのですが、そこで言われた番組の条件は「伝わること」、「内容を包括し凝縮したタイトル」、「適切なメディア選択」でした。この作品はその全てを満たしています。
メディア選択とはフルアニメーションではなくリミテッドアニメーションにしていることを意味しています。フルアニメーションだと作品の淡い雰囲気が飛んでしまうように思います。
『女子的生活』
『女子的生活』はトランスジェンダー「小川みき」の痛快ガールズストーリー。テーマは重たいのだけれど軽いタッチでとても楽しい作品です。原作は坂木司の連作短編小説です。主演は志尊淳さん。乙女塾も関係性があり、例えば、西原さつきがゲスト出演しています。2018年1月、NHK総合「ドラマ10」で放送されました。
✨そして興奮冷めやらぬ
皆さんにお知らせです✨この後
NHK
1時45分〜
主演しました
ドラマ
「女子的生活」
1話、2話が再放送されます!!!これもまた素敵な作品です!
愛する作品です!
早めのただいまです。今日は夜更かしだな、これ。
是非、ご覧くださいーー!!#女子的生活 pic.twitter.com/3DeqrYSwMr— 志尊淳 (@jun_shison0305) March 11, 2018
私はこの作品にとても強いインパクトを感じました。これを見なかったら、トランスすることも乙女塾に来ることもなかったのではないかと思っています。
『弟の夫』
『弟の夫』はトランスジェンダーではなくゲイのお話です。それもゲイの当事者ではなく、その家族の物語です。カナダで同性婚をしていた弟が亡くなり、その『夫』が日本の兄の前に現れる。そして家族として受け入れられていく様子を描いた作品です。NHKがこのような作品を放送するとは「時代は変わった」と思わせるインパクトがありました。
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— 田亀源五郎 Gengoroh Tagame (@tagagen) May 10, 2023
原作は田亀源五郎先生の漫画です。主演は佐藤隆太さん・ 把瑠都(元大関)さんでした。2018年3月にBSプレミアムで放送されました。
なぜ心を打たれるのか
この3作品に共通していえること。私は次の3点を考えています。
1.重いテーマを軽いタッチで表現している
2.当事者を「普通の人」として描いおり、ステレオタイプにとらわない、当事者のリアルな世界が展開している
3.差別や偏見がない
とにかくリアルで心地よいのです。だから当事者の心情がよく伝わるのだと思います。おそらく、制作者が当事者の取材をよくしているのだろうと想像できます。
ドラマで「取材」というのは不思議に思われる方も多いと思いますが、取材は番組制作の基本です。女子的生活には「トランスジェンダー指導 西原さつき」とクレジットされています。これは取材をしている証明です。ドラマの舞台のリアルや背景を制作者が理解していることは絶対に必要なのです。そうでないと、見当違いの番組が出来てしまいます。最悪の場合差別や偏見を助長することになります。
残念なことに、トランスジェンダーを扱った作品には誤ったトランスジェンダー像に縛られているものがあります。MtFを見世物にして辱める作品すらあるのです。当然、そのような作品は心に響くことはないし、何も伝わりません。
終わりに
「パーフェクト・ガールフレンド」のヒロイン「秀ちゃん」は普通の女の子です。普通の女の子の普通な恋物語なのです。トランスというフレーバーがちょっと載っているだけ。だから心を打たれるのだと思うのです。「私、女の子だから」っていう私の心を直撃するんじゃないかって・・・。いまだ心の震えが止まりません。