ジェンダー多様化で定番となった「男の娘」とは? 女装やトランスジェンダーとの2つの違い

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あなたは「男の娘(おとこのこ)」という言葉を知っていますか?

「男の娘」とは、wikipediaによると「少女のような外見をした少年」つまり、「外見が『女の子にしか見えない』男の子」のことです。

ジェンダーの多様化が進む中で、他にも似たような呼び名が生まれてきています。 それではLGBTにおけるトランスジェンダーと、どのように違うのでしょうか?

男の娘とは?

私は「男の娘」と「女装する人」や「トランスジェンダー」と大きく違うのは、大きく2つのポイントがあると考えています。

それは「性別違和の有無を問わない」こと、そして何より「若い子限定」「可愛いまたは美しい」など、ルックスがポイントになっていることです。

かつて西原さつきは「男の娘という存在の、明確な定義は私もハッキリと分かっている訳ではない。ただ女性ホルモンの投与を受けておらず、身体は完全に男性の状態。でも顔は女の子にしか見えない。かつ、若い。というのが私の中での男の娘の印象だ(「男の一生よりも刺激的な女の一夜」 110-113頁)」と述べていることが書籍に残っています。

男の娘の歴史

「男の娘」に対する評論は「秋葉系」と「現実の流れ」との2つがあります。そして、それぞれの文献やwebサイトで若干のずれがあります。ここでは私の経験をもとに、少しその歴史を振り返ってみようと思います。

1990年代までは、女装やトランスジェンダーが登場するマンガというのは大変貴重でした。

たしかに、それまでも『らんま1/2』『ストップ!ひばりくん』など例外的にメインで扱った作品はあったものの、基本は『セーラームーン』のフィッシュ・アイのような脇役が多く、予期せず出会えたら大変うれしいという状態でした。

それから時代は進み、2000年前後のインターネット黎明期が到来します。「TSF(トランスセクシャルフィクション)」と呼ばれる同ジャンルは、同好の士がwebサイトの掲示板を通じて、お互いに情報を出し合い交流していました。

その後、2000年代中期頃から2010年前後にかけて、ついに「男の娘ブーム」が巻き起こりました。

きっかけに関してはいくつかの意見があります。初めての出会いが成人PCゲーム『はぴねす!』の「渡良瀬準」であったり、格闘ゲーム『GUILTY GEAR(ギルティギア)』シリーズの「ブリジット(後の作品で性別違和ということになりましたが…)」であったりです。

そして気が付けば、『バカとテストと召喚獣』の木下秀吉(2007年)、『steins;gate』の漆原るか(2009年)など男の娘キャラクターは、名脇役としてアニメ・マンガ作品を彩るようになっていきました。

ネットスラングで「こんなに可愛い子が女の子のはずがないじゃないか!」というセリフを生んだのも、この男の娘ブームからでした。

現実の世界にまで波及、そして…

その波はマンガやアニメ、コミケ界隈だけに限らず、成人向けコンテンツ、さらには実世界まで巻き起こることになりました。

やや成人向けなアンソロジーとしては『チェンジH(2009年創刊)』、実世界では「#女装」「#ニューハーフ」「#トランスジェンダー」といったSNSのタグに「#男の娘」を加えて、自撮りを投稿する人が増えていきました。

このように実世界では、女装やトランスジェンダーと名乗るよりも、「男の娘」と名乗った方がイメージされやすいといった事情もあったのかもしれません。身近に「男の娘」と抵抗なく名乗ることができるようになり、次第に流行は「定番」となっていきました。今でも、SNSを中心に「男の娘」というタグは頻繁に目にします。

しかしエンタメの世界は、注目を集めたキャラ要素が一気に広がっていくものです。かつてステレオタイプなゲイのキャラクターが登場し始めた時期のような、キャラ付けとしての「男の娘キャラクター」が増えていきます。そして、真新しさがひと段落したことでブームは収束に向かっていきました。

例えば『チェンジH』は2011年に休刊、2012年に一時復活したものの、2014年に再び休刊しています。

男の娘が流行った理由として、旧来のジェンダーのあり方から「男っぽくなくてもいいんだ」「かわいい男の子がいてもいいんだ」という「思いのよりどころ」として、受け入れてくれるという安心感があったのかもしれません。

いつかまた、新たなブームが巻き起こるかもしれませんね。

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