2日、CBCテレビで「還暦手前で気づいた“生きづらさ”と“違和感”の正体・・67歳で女性になったトランスジェンダーに密着」がテレビ放映されました。 現在はCBCドキュメンタリーのアーカイブとしてYouTubeでも閲覧することができます。
乙女塾のボイスレッスン、西原さつきの著書も番組内で紹介されています。
今回はあまり表立って語られることの少ない中高年の方のトランス(性別移行)についてです。実際の生徒さんの意見をもとに良かった点・大変だった点を説明していきます。
乙女塾の生徒層
生徒の方の年齢層についてよく聞かれるのですが本当に様々です。今までで一番下は中学生、上は70台前半と半世紀以上の年齢幅があります。
もちろんボリュームゾーンがございます。1つは20台前半の学生層、もう1つが今回とりあげる「45歳よりも上の中高年層」です。
中高年の方のトランスへの思い
45歳以上の生徒さんがトランスを決意する理由は人それぞれ。ですが、共通した思いがあります。「女性になりたいという願いを長年押し殺してきた」と言います。
この年代は成長期にテレビの影響を受けてきた世代です。インターネットの登場は大人になってからで、治療の情報はおろか「トランスジェンダー」という言葉さえ知らずに自分が何なのかよくわからずに暮らしてきた、という話を聞くことも多いです。
また、メディアの影響から「ニューハーフ」「オカマ」と呼ばれ偏見に満ちた像を見て、自分のなりたい女性のイメージと何か違うと違和感を覚えた世代でもあります。そのぐらい情報がなかったと聞きます。
結婚をして子供がいるという方も少なくないのですが、トランスにあたり家族の理解を得られるかはバラバラのようだとも。離婚するもの、離婚しても同居して仲の良い友達のような関係にあるもの、婚姻関係を続ける方も話に聞きます。
中高年の方がトランスするメリットは?
一般的に遅い年齢から何かを始めることはデメリットも多いと考えられがちです。ですが、トランスに限っては良いことも多くあるので勇気を持ってほしいです。
1つは学生時代よりも財政基盤がしっかりしているケースです。そのために、貯金を使って一気に2-3年程度でトランスを終えるという者も少なくありません。経歴や資格がある人も多く、その後の女性としての再就職も比較的かなえているようです。
もう1つは年齢を重ねると若い時ほど男女差が明確でないケースが多い、ということがあります。界隈には「おばパス」という言葉がありますが(この言葉が良いか悪いかは別として)「こんな女性いるよね」というハードルをクリアしやすい実感を得る場合が多いそうです。
最後は休みがとりやすいという話も聞きます。以前よりも比較的時間的に融通がきいたり、治療のための時間を取りやすい方が増えてくるというケースも多いです。
ただ、最後までは望まずにゆるやかな性別移行にとどめる方もいて、そのあたりは人それぞれなのかもしれません。
中高年の方でトランスをはじめるデメリット
もちろん良いことだけではないのが現実で、デメリットもあります。それは第一に健康状態です。
トランスの中には医療による治療が避けられない場合があります。特に、SRSにあたっては心臓へのストレステストなど事前にやるべきことが増えてしまいます。また、トランス中の健康診断で要検査となり病気が発覚、SRSではなくて病気の治療を優先して行ったという事例もあります。
次に家族を形成している人が多く、その場合は子供が成人を超えるまでは(SRSを終えていても)戸籍上の性別を変えられないという点です。これは20代、30代のトランスでも同様のケースがありますので年代によって変わりませんが…。
最後はAGA(薄毛)の問題です。第二次性徴と同じくAGAになっていて髪の毛が減ってしまっている場合です。ヘアピースやウィッグに頼る人もいます。その場合、コストが上がってしまいます。しかし、女性ホルモン療法によって産毛が生えてきたなど回復傾向にある場合もあります。
昨今は生まれながらの女性でも薄毛に悩む方は多く、髪の毛のボリュームという問題は普通にしていても避けて通れません。
また、人によっては自分の中で培われた男性時代の癖や理が抜けきらないと悩まれている方もいらっしゃいます。どうしても笑顔が作れなかったり、男性としてのマナー・しっかりした社会人らしさがあったり……そういったものが悩みだと仰っています。
実際、中高年の方のトランスってみんなどうしているの?
トランスしている方に話を聞くとみんな楽しそうです。
歳相応のおばさんになれればよいという人もいますが、番組内であるようにロリータや学生服といった洋服を着てみるもの、髪の毛をピンクや赤に染めてヘアカラーを楽しむもの、ジェルネイルやまつエク、エステといった美容を楽しまれる方もいます。一度はやってみたかったという思いをかなえている方が多いように思えます。自分らしくエンジョイされていて、とても素敵ですよね。
また、Facebookなど各種SNSでは中高年年代の方向けのトランスジェンダーのコミュニティもあります。仲間同士でつながれるのはやはり大事ですよね。
※生徒さんたちの意見をまとめたものを記事化しています。トランスには個人差があるため、「こういうケースがあったよ」「こんな意見が多く寄せられていた」というニュアンスでお伝えさせて頂いております。