2022年1月から1つ大きな変更がありました。それは「性同一性障害」と言う言葉が「性別違和」を経て「性別不合」に変更になったことです。
精神疾患に関する分類は、アメリカの国精神医学会発行のDSM(Diagnostic and Statistical Manual Disorders 精神疾患の診断 ・ 統計マニュアル)と世界保健機構(WHO)が作成するICD(International Statistical Classification of Disease 国際疾病分類)によって呼び名が決まっています。
2013年のDSM-5で「性同一性障害」は「性別違和」に変更になりました。ここまではご存じの方も多いと思います。さらに、2019年のICD-11において「性別不合」に変更、先月(2022年1月)より実施されました。
何故このような流れになったのでしょうか?
今回は2020年4月に仙台の「村口きよ女性クリニック」が発行した「きよくりnews VOL.64」より許諾をいただき、解説を転載いたします。
脱病理化を目指して
この一連の流れの中で、重要なのは病気か病気でないか(専門的には病理化か、脱病理化か)ということです。この流れは同性愛が脱病理化されたことがモデルになったとのことです。
同性愛は第2次世界大戦後も長く精神疾患とみなされていましたが、1987年についに疾患リストから削除されました。さて今日、LGBT(Lesbian Gay Bisexual Transgender)はよく知られています。
Transgender トランスジェンダーの用語は、医学界が命名した「性同一性障害」 の用語に対して、当事者たちが中心に命名し、概念化し、発達させてきました。身体的性別と性同一性が不一致であっても、それは障害ではない、個々が尊重されるべき、多様なセクシュアリティの一つであると考えるのです。
当事者たちの熱い思い、そして今日において世界的潮流となってきた人権尊重の流れは、専門家たちに疾病分類の変更を促したということです。
DSM-5はなぜ「性別違和」か
DSMは米国精神医学会の発行する精神疾患の分類です。精神疾患のリストから外れてしまえば、疾患とみなされなくなり、医療保険の対象になりません。(※乙女塾運営部注:日本では保険適応は実際1部にとどまっている)
性別に違和のある多くの人たちは、ホルモン療法や外科的手術など医療を必要とします。こうした現実的必要性から、苦渋の選択として、やや病理性の薄い「性別違和」 となったということです。
ICD-11は「性別不合」で決着し、脱病理化に成功した
元々ICDは 精神疾患だけのリストではありません。
「性同一性障害」は「第6章、精神・行動・精神発達の障害」から外れ、「第18章、性の健康に関する状態」に移りました。章をうつすことにより、精神疾患ではなくなる一方、全体のリストには残り、従来通り、医療ケアを受けることができます。
日本での対応はどうなる?
これらの流れを概観した時に、当事者達の力がいかに不可欠なものであるか、歴史を動かす原動力になるかがよくわかります。社会は刻々と進化していきます。ICDは国際的にも公的なものであり、日本は正式にその分類に準ずることになっています。今後、特例法はどうなるのでしょうか。
ーーというところできよくりnewsは終えられています。さて、この報道から約2年、2022年ももう2月です。「性別不合」になったことで何か日本での変化はあるのでしょうか?
実は、「言葉が変わった」だけではないんですね。細かい内容は次回以降見ていこうと思います。
(協力:「村口きよ女性クリニック」 リンクや医院紹介は希望により外しております。転載許可を頂いたこと誠に感謝いたします。)