NHKドラマ『虎に翼』2か所の「もやっ」を考察する。

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NHKドラマ『虎に翼』では第21週の放送でトランスジェンダー女性の中村中さんが性転換手術を受けたバーのママとして出演致しました。このシーンはSNSを中心に話題となり、当事者以外からも幅広い意見がうかがわれました。その中でとりわけ指摘の多かった2つのシーンを考察していきます。

https://www.youtube.com/watch?v=NHqvDbAnJco&t=1s

性別適合手術ではなく「性転換手術」という表現

現在、日本では男性から女性へ外性器を手術することを性別適合手術(SRS)ということが多くなっています。かつては、性転換手術と呼ばれることが多く、その名残からか今でもニューハーフ業界では性別適合手術ではなく性転換手術、トランスジェンダーでなくニューハーフと自らを呼称する方が多いのが実情です。

ドラマでは当・乙女塾でもインタビューに出演なさってくださいました三橋順子先生が監修をしております。つまり、そうした事情を知らないはずがありません。あえてそのような表現をしたと考えられます。

ドラマ『虎に翼』は1945年(昭和20年)戦後の焼け野原からのスタートです。日本で初めて性別適合手術をしたトランスジェンダー女性は永井明子さんと呼ばれており、彼女は1950年、1951年と2回にわけて手術をしたと言われています(ただし手術は非公式なもの)。この、永井明子さんが中村中さん演じるバーのママのモデルではないかと言われています。

「女になるために頑張ったことある?」という問いかけ

次に、SNSで否定的な意見が多くあがったのが、バーのママによる「女になるために頑張ったことある?」という問いかけです。

これは、トランスジェンダー女性から見たシスジェンダー女性への憧れや違いを端的に示した複雑な言葉ですが、ボーヴォワールの著書『第二の性』による「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」をオマージュしたのではないかと考えています。

ボーヴォワールは「女性は男性に付き従うべきだ」という当時の考えは女性は男性に従う「第二の性」とされていると主張。フェミニズムの立場から、女性の解放を訴えました。

ドラマ『虎に翼』も時代背景として1929年に日本初の女性専門に法律を教える学校ができ、そこから女性弁護士が誕生するという背景があってのストーリーです。つまり、どのような女性になりたいのか、それは外見だけでなく内面も含めての問いをしたのではないかと私は考えました。

このような女性の社会進出、解放というのは難しい話でも政治的な話でもありません。例えば、ボーヴォワールの生きたフランスではファッションの世界でも当時多く起こっていたことです。シャネルしかりイヴ・サンローランしかり、今も根付くファッションブランドの礎には女性の社会進出というキーワードがあったからこそ新しい女性像を体現する洋服として支持を得られました。

このようにNHKドラマ『虎に翼』はその背景を含めて考察するのも非常に楽しいドラマになりました。トランスジェンダー女性が出演し、当事者が演じるという形も含めて一度視聴してみることをおススメいたします。

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