乙女塾ティータイム 第1回「イシヅカユウ」さん(パート2) 片袖の魚やSNSでみえる、普段のイメージとは

  • みなみ
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    乙女塾

さつきとイシヅカさんの対談は、どんどん広がっていっていきました。わたしが一番聞きたかった、映画「片袖の魚」の話や、SNSでみるイシヅカさんのイメージ、モデルとしてのイメージについてどんな感じで表現されているのかなど、核心に迫る内容になってきました。パート1から流れで読んでもらっても、あるいはこちらパートだけでもイシヅカユウさんがどんなことを考えて表現しているのか垣間見れるかもしれません。

前回はコチラから↓

「片袖の魚」やSNSでみるイシヅカユウさんのイメージ

さつき:「片袖の魚」に出たこととか、SNSから感じるイシヅカユウさんのイメージって、なんかこうクールビューティっていう風に思えて、寡黙であんまりしゃべらないイメージだったんです。

イシヅカ:あ、よく言われますね。

さつき:そういうのって意図しているんですか?

イシヅカ:元々モデルなので、やはりあまり喋るというよりか……あんまりキャラを出さない様にはしていました。

さつき:確かにこんなに気さくにお話をしてもらえるとは思っていなかったです!

イシヅカ:でもしゃべるの大好きですから、だいたいインタビュー(の時間)が伸びますよ。

さつき:しゃべるの大好きなんですね。

イシヅカ:大好きですね。

さつき:すごく意外です。そういう一面を知っている人って意外に少ないのかなって思います。なんかそういう一面ってもっと出していかないんですか?

イシヅカ:でも最近、キャラが崩れてきました。仕事とかインタビューとかでしゃべる機会が増えて「ま、良いかなって」思えるようになりました。今まではモデルとしてショーに出るってことが中心でしたけれど、最近は舞台挨拶などもありますし。これでもう(自身を)隠しきれないかなって。

さつき:わたしも、もともとモデル事務所がデビューでした。それが17歳の時だったのですけど(当時は戸籍が男性だったので)マネージャーさんもどう扱って良いか分からなかった感じでした。もう20年近く前かな。でも、なんかちょっと性別が中途半端なままだと違うなぁとか思っていて。それで体の手術をしたのが26歳だったんです。そのあと東京に上京して、最初はタレント業とかモデル業とか役者業って頑張っていたのですが、正直全然儲からなくって、もう生活できないって感じになってました。途中から乙女塾でトランスジェンダーの方の支援のお仕事をしているんですけど、そこで声が中心の仕事にシフトチェンジしたら、仕事がばーっと増えました。やっぱり仕事の適性とかあるんだなって感じましたね。

「片袖の魚」関わるようになった経緯は?

さつき:「片袖の魚」のオーディションってどんな感じだったんですか?

イシヅカ:なんか(西原さんも)受けられたって?

さつき:うん、友人役でね。実は受けたのですけど、落ちました……それで、どうでした?どんな感じでしたか?

イシヅカ:監督とすごくしゃべりました。一応、台本の読み合わせとかはしたんですけど、あとはずっと話してた記憶があります。

さつき:受けようと思った経緯というか、きっかけみたいなものは何だったのですか?

イシヅカ:もともと監督の映画の振付を担当された方が知り合いで、その方に今度こういうのあるよってDMを頂いたことがきっかけです。それを頂いた時に、そういう(当事者が演じる)流れが海外からあるとは知っていたのですけど、まだまだ日本ではなかったので、率直に嬉しいなと思い、何か関われればいいなという思いで受けました。

さつき:出演してみた後で、すごいその、心境って変わりましたか?

イシヅカ:自分の中で、特に日本の社会における生き辛さとか、制度とかについて考えるすごく良い機会になりました。それまで私は、正直に言ってあまりそこについてしっかり考えていなかったのですが、実際演じて、そして監督はじめ様々な方の話を聞くことでそこに自分の意識が向いた。いい意味でとても大きな変化だったと思います。

SNSは社会の一部でしかない

さつき:わたしは結構、トランスジェンダーですって表明して活動させてもらっているんですけど……正直、今ってそのことについて色んな意見があるじゃないですか? 良い意見もあるけど、ちょっと否定的な意見とかもあったりして。わたしはそういうのに結構傷つくタイプで、しっかり落ち込むんです。イシヅカさんは、そういうのって無いのですか?

イシヅカ:わたしも結構落ち込みます。だけど、周りに恵まれているというのもあるのか、なんとか生きていけていけています。活動を続けていく上で色んなことを覚悟しています。ただ、だからといっても何でも言われても良いっていうことにしたく無いのですよ。それはおかしいですって気持ちで、わたしはSNSで(返事を)返しています。

さつき:結構、とっても酷い言われ方をされていますよね。

イシヅカ:それでめげないわけじゃないですよ。結構、傷付くし。でもわたしには他にも好きな活動がある訳だし、それに楽しく活動をしている。大事なツールになってくると思うんです、SNSって。

だけど、SNSってまだ社会のほんの一部でしかない。それ以外のところで沢山応援してくれている人もいるから。

さつき:わたしは(誹謗中傷などを)聞いて受け流すところがあるのです。けど、イシヅカさんはそういう意見をちゃんと聞いて、ちゃんと答えていますよね?

イシヅカ:最近は、色んな事件とかもありますし、SNS上でも傷ついたりするから。

さつき:そうですよね。

イシヅカ:最初はそういう議論も、よく言えば意見交換だと思っていたんです。けど最近は全部ブロックしていますね。SNSでは仕事の情報を発信出来ればいいし、議論はそういう場(議論すべき場)ですればいいわけで、SNSでやる必要も無いかなって。

建設的な意見を話し合うことに向いていないのではないかとも思います。それは行政とか話合うべきところで話合って決めていけばいいとも思う。

さつき:そういうのって、シンプルに腹が立ちますよね。

イシヅカ:議論出来る人ができる範囲でやることは、とても大切だと思いますけどね。

さつき:今みたいなお話しって、きっとみんな聞きたいと思います。なので、聞けなかったことを教えてもらえて嬉しいです。

イシヅカ:(みなみとの出会いがTwitter上で音声を使ったリアルタイムの会話が出来る機能「スペース」での出会いがきっかけだったことに関して)スペースは、意見交換するというより、自分が言いたいことをいうという場だと思っています。

わたし、実は詩をかいているんです。noteでも発表しているのですが、そういうのを発信できる場だと思っています。朗読もするんですよ。自分の書いた詩を朗読したり。

さつき:声、素敵ですよね。

イシヅカ:褒めて頂けて光栄です。

カミングアウトすること

さつき:先ほど覚悟っていう言葉が出ましたけれど、例えばトランスジェンダーの人と交流することについて何か思う事ってありますか?

イシヅカ:わたし、一応(トランスジェンダーであることを)公表しているんです。でも意外と知らない人が多くて。最初に公表したのは10年以上前の2011年頃、ちょうど自分が成人した年でした。早稲田の「ReBit」っていう団体(NPO法人)の成人式があったんです。

どうしても当事者の方って、地元の成人式って行けないじゃないですか?ただ、LGBT成人式っていうのが世田谷であったんです。ちょうどその頃、学校もやめて、すこしフラフラしていた時期でした。なんとなくそういうのを見つけて、ほぼそれが初めて東京に来た時だったかな。そこで、いろんな当事者の方とお話できて、そこで(報道番組の)「News_Zero」の取材を受けて、それがテレビに流れることになってしまったんです。

それまで高校の友達にも自分のジェンダーについては何も言っていなかったんです。でもテレビってみんな見るかもしれないじゃないですか?つまり、それが初めてのカミングアウトでした。本当はクローズドで生きて生きたかったのだけど、そういうことがあって、色々と伝わってしまったのです。

わりとなし崩し的に生きている部分があって、あまり「こうしよう」とかあんまり考えるタイプじゃないんです。ただ、ずっと(エッセイストの)能町みねこさんの書籍を読んでいました。それまであんまりなかったロールモデルを見つけた気がして……こうやって生きていけるんだよっていうのを出してくださっていたのが能町さんでした。

さつき:テレビにも出てらっしゃいましたよね。

イシヅカ:佐藤かよさんとか、上川あやさんとかも。

さつき:トランスジェンダー当事者の方と交わりたくない、とは思わないんですか?人によってはあまりそういう人とは出会いたくないっていう人もいるのかなって思ったのですけど。

イシヅカ:前は確かにそういう気持ちがあったかもしれない。だけど、交わる必要もあるのかなって思っています。

わたしの場合はわざわざ当事者だから友達になるというのは無い。そうであってもいいし、そうじゃなくってもいいし。

だけど、当事者コミュニティがあることによって、ある人にとっては逃げ場になるかもしれないし、ライフラインになるかもしれない。そこを否定したくないって気持ちもある。

家族に支えられて

イシヅカ:(セクシュアリティについて周辺の方に理解されて恵まれているという話の中で、ファッション業界にいたからなのか?という質問に対して)

いえいえ、そんなことないですよ。たしかにそういうイメージって持たれがちなのです。けど、結局なんだかんだ言ってファッション業界って男性社会なんですよね。やはり、成功するデザイナーとかまだまだ圧倒的に男性のほうが多いし。なので、仕事ということより、プライベートで関わってきた人のほうが、理解がある方も多い。でも、わたしの場合は家族からの理解もあったってことが大きいかなぁ。家族って、そういう理解が無いっていう人も多いと聞きますが。

さつき:兄弟姉妹がいるんでしたっけ?

イシヅカ:妹が1人います。甥っ子と姪っ子。月末に、姪っ子のピアノの発表会があるので、それを観に帰るんです。

さつき:(妹と)いくつ違いなのですか?

イシヅカ:2つ違いです。

さつき:似ていますか?

イシズカ:全然似てないです。

さつき:そうなんですね。

イシヅカ:妹は「倖田組(歌手:倖田來未のファンの総称)」で、甥っ子や姪っ子は鬼滅の刃とかが好きです。イマドキの子ですよね。

それで、ちょっとカミングアウトの話に戻っちゃうんですけど、カミングアウトちゃんとしようと思ったきっかけは、その甥っ子、姪っ子の存在でした。

わたしの立場をカミングアウトして公表して生きることで、色んな生き方がしやすい社会をつくることが出来ればと思っています。親戚の子たちはまだ小さいから、どんなアイデンティティを持っているか分からないし、どんな生活になるかわからない。でも、もしかしたらわたしが公表することで家族や社会のために何か出来ることがあるのかもしれないと考えるようになりました。なので自分のことを公表して、トランスジェンダーのための活動も積極的にしようと考えるようになったんです。

さつき:わたしも30歳を超えるぐらいから、そういうことをとっても意識するようになったなぁ。そういう他者との関係みたいな、自分が出来ることで、さらに世の中に対して出来ることがあれば良いなって思って。なので今日は来てくれて本当に嬉しいです。

みなみ:片袖の魚の東海林監督にDMで、撮影機材がスマホだったことについて質問させて頂きました。撮影の際にスマホは小さいけど、その分照明をたくさん当てないと色が出ないから大変だったそうですね。

イシヅカ:そうなんです。スマホで撮影するって聞いていたから、コンパクトにやるんだって聞いていたら、照明部がすごかったんです。最初、スマホのカメラだって気付かないほどでした。

バーのカウンターの中から撮影するシーンがあったんですが、そこはバーのカウンターの中ですから狭かったんです。多分、普通の機材だったらあの画は撮れなかったと思うんですよ。なので結果的にすごくいい選択だったのではと思います。

みなみ:千秋役の椎名理火さんが演じるバーのシーンが良かったですよね。

イシヅカ:お互いにほぼ初めましてだったんですよ。だけど、何か通じ合えるものがありました。

さつき:理火ちゃん、ほんとユニークな子ですよね。

イシヅカ:1回会うと、5時間ぐらいずっと話しています。別府の上映会に2人で行って(監督がいけなかった回)その間2人でずーっと話していて。笑

さつき:仲良しさんですね!

イシヅカ:たまにしか会えなくて、なかなかお互いのスケジュールが合わないのですが、なんか面白くて。あとね、お互いに連絡無精なんです。

さつき:理火ちゃんね、わたしも2013年ぐらいからプライベートでも仕事の現場でも会っています。長いなぁ。そういえば片袖の魚の現場が終わった辺りに、理火ちゃんに久しぶりに会っったんです。その時に、イシヅカユウさんってどうなのって聞いたことがあったの。

イシヅカ:なんか悪口言っていました?笑

さつき:いえ、なんか「わたしはすごいイシヅカユウさんと仲良いよ」って言っていました。「えー、普通にしゃべるよー」みたいな。機会があったら今度はその3人でぜひお茶しましょう。ところで、イシヅカさんって、人見知りさんですか?実はわたしはすごい人見知りなんです。

イシヅカ:わたしは、人見知りが故に逆にすごく話すかな。人見知りを早く解決したい。ずっとしゃべっていて、お互いにリラックスするようにしないと。でも仕事の現場ではあんまりしゃべらないかな。絡み方とかもわからないし、話しかけちゃいけないのかなとか思っちゃう。そうすると、一見静かな人なのだと思われちゃいますね。

パート3に続く…

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