「トランスヘイトにあったらどうするか」を見に行ってきた

  • みなみ
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    乙女塾

大阪産業創造館で、2024年2月2日(金)〜2月4日(日)、2月9日(金)〜2月11日(日)に、セクマイ大会2024(セクシュアルマイノリティと医療・福祉・教育を考える全国大会2024)が開催されました。

大阪のLGBTQ+イベントでは大きなもので、毎年開催されています。今年のテーマは「おかえり多様性、人権を回復するためのつながりづくり」です。

医療と福祉、教育を中心としたこのイベントでは、18の分科会、16の活動報告があり、様々なテーマについて討論がおこなわれています

https://peatix.com/group/7183814

その中で、2月3日(土)16:30~18:00に、分科会6 トランスヘイトへの対応~考え方と実践として講師に「トランスジェンダー入門」の著者、高井ゆと里さんを迎えておこなわれました。同イベントは、高井さんが個人的におこなわれていたイベントを再現したもので、現地参加、オンライン、アーカイブで参加できます。

わたしは、東京からで当日同時に別イベントに参加できませんでしたが、翌日アーカイブで視聴することができました。

分科会6 トランスヘイトへの対応~考え方と実践~

https://sekumai2024p6.peatix.com/view

イベントのご案内にはこんなコトバか書かれています。

昨今苛烈さを増しているトランスジェンダーへのヘイトは当事者や支援者に深刻な影響を与えている。ニュースへの何気ないコメント、当事者へ向けられる「素朴な質問」、あらゆる社会制度を支える区別として突然持ち出される(俗流)”生物学的”性の二元論。どこから対話を始めればいいのか、どうやって自分の精神衛生を守ればいいのか、困っている人が多いのではないだろうか。

・友達、家族、会社のひとからの何気ないコトバ
・SNSでどんどん過激になっているトラスヘイトのコトバ

これらに傷ついて、悲しくなり、生きる希望を失ってるトランスジェンダーは少なくないと思います。

なぜ、彼らはヘイトをするのか、ヘイトをされたとき、自分はどうしたらよいかを、具体例をあげながら、高井ゆと里さんは語ってくれました。

なぜトランスヘイトが存在するのか

高井さんのお話ではトランスヘイトが急に増えたのにはいくつか理由があるといいます。

1つは、ヘイトがここまで増える以前は、トランスは社会的にいないものとして扱われていて、理解がされてこなかったという構造的な素地があるということです。これは簡単に崩すことはできません。

もうひとつは、コロナによるパンデミックで文字だけのコミュニケーションが増え、知識のないことにまで素朴な投稿を簡単にできる状況ができてしまったことです。

最後に、知識がないので、”生物学的”性の二元論に基づいて、性器のあるなしにこだわる意見が増え、それが、トイレやお風呂という話題だけが強調されてしまったのです。

ヘイトする人は、深い知識もなく、素朴に発言しています。その事でトランスジェンダーに関する情報が錯綜してしまいました。このような人の考えを変えるのはむつかしい。一方、コロナ渦でもリアルな現場で活躍していた医療者のあいだではヘイトのコトバはないと言われます。

そこで、今回のワークショップの目的として、このようなヘイトに対応するため3つの目標を提示されました。

・トランスヘイト的な背景をもつコメント
・質問等に悩まされている人が少なくないことを知る。
・そうした質問等に応対するときに役立つ知識や、もつべき姿勢などを学び、持ち帰る。
・これから使えるリソースを知る。

まず、トランスヘイトに悩んだり苦しんだりしてる人がいることを知り、そういう言論を言われたとき、どのように対応したり、どういう姿勢でいればいいのかを学び、そして正しい知識や対応ができるように、書籍などを読んで学ぶということです。ワークショップではこれらの具体例が提示されました。

トランスヘイトにあったらどうするか?

ワークショップでは2つのケースが提示されて、みんなでどういう対応をしたらいいかを話し合う双方向の講義がおこなわれました。

まずは、どんな場合ケースでも、まず「安全を守ること」が第1です。

SNSでバッシングされたとき、つい相手の意見に反論して相手の考えを変えようと説得した記憶ないですか?わたしはあります。でも、長い時間でつくられた構造的素地の上でヘイトしている彼らを説得することは困難です。そして彼らの発言はその素地から生まれた素朴な発言なのです。本当にトランスの諸問題に疑問をもったのなら、トランス関係の書籍を読んだ上で発言するでしょう。

トランスヘイトされて、困らされているあなたを、この言葉を言えばまるっと解決するというコトバはないのです。

場を理解する

場を考えたとき、発信者とあなただけがその場にいるわけじゃないのです。

それを聞いてる、トランスジェンダー、ノンバイナリーの人の当事者がそこにいて、ヘイトや差別的言論をしなかったり、中立的で判断保留をしている、その他多くのひとがいることに気付きましょう。

そして以下のような原則があります

・ヘイト言説に承認を与えてはいけない
・発信者(ヘイトを言った人)を説得することだけが重要ではない。その他のひともいる
・恥をかかせるわけでなく、キッカケを与えた方が良い文脈も存在する。

という必要があるとおもいます。その為には事前にその場が安心安全な場であることを宣言することも大切です。

素朴なヘイトは、素朴ではない

ヘイトは、未来にむかって発言されることがおおいです。例えば、

– 特措法が改正されてたら、陰茎のある男性が女風呂にはいってくるぞ
– 陰茎のある男性が女性トイレに入れると、性犯罪者と見分けが付かなくなるぞ

このような議論は、まず時間を現在に戻すべきです。これから未来をどうすればいいのか?現在トランスジェンダーはどのように公衆浴場を使っているか? 女子トイレを減らすことなく、誰でもトイレを増やすことはできないのか そういう建設的な議論をしたほうがよいのです。

そしてトランスジェンダーの多様性についても意識する必要があります。移行初期の人からすでに埋没してしまったひとまで様々だからです。

ヘイト的な質問の背景・前提を考えよう

ヘイト言説に対応するには、自分達が知識を身につけ、論点の解像度をあげ、真に議論しないとけないことを理解しておかなければなりません。以下の点に注意してヘイトの背景を冷静にかんがえましょう。

・トランスジェンダーの生き様について誤解や偏見はないか
⇛指摘できるように、わたしたちも知識が必要
・今の社会で性差がどのように機能・運用されているかの解像度が荒い
⇛自分達の解像度を上げておく(お風呂は性器の形でわかれてるとか)
・議論するトピックに恣意性や権力性が働いてないか(お風呂トイレ問題ばっかり)
⇛真に議論しなければならないこと(社会にかわってほしいこと)を知る

わたしたちはどうしたらいいのか

ヘイトがどの様におこなわれるのかがわかったところで、わたしたちはどの様にすればいいのでしょうか?

まずは「背負いすぎないこと」です。あなた1人がヘイト的言説を抱える責任はありません。

ヘイトをされたとき、まずはかわして時間稼ぎしましょう

・わたしはそうは思わないんですよねー
・その話はあとで聞きますね
・そういう人いますよね

つぎに、「良質な情報を紹介してみる」ことです。結局、ヘイトする人は、トランスに対する本当の興味も、知識もないのです。その為には、あなた自身が学ぶ必要があります。

なんとなく気になるから、素朴にヘイトしてしまったのであれば、今後も関わるなら未来じゃなくって現在に引き戻し、責任をもって正しい知識を身につけてもらうことです。素朴な疑問から、その背景にあることに気付かせてあげることが重要です。

ワークショップでは、大学の授業で講師をやってるときや、講演会等で、ヘイト言説を含む質問をされたとき、限られた時間で、安心安全な場所を作る方法もみんなで考えました。トランスジェンダーはその会場にいるという前提で、その人を傷つけないことを念頭に話すことが大切です。

良質な情報源で、自身も勉強し、素朴なヘイトをする人に紹介できるようになろう

高井さんの「トランスジェンダー入門」や、ウェブサイトのhttps://trans101.jp/は 読むのは当然として、様々な書籍、映画があります。これらは、また乙女塾のサイトで、乙女塾の本棚として紹介していきたいと思います。

最後に高井さんがお守りとして記事を2つ上げてくれました。これを読んで正しい知識を身につけてください

高井ゆと里のブログ

https://yutorispace.hatenablog.com/

トイレ問題や、特措法の手術要件についての記事が読めます

wezzyの記事

素朴な疑問は素朴ではない~トランスヘイト言説に触れたら~

https://wezz-y.com/archives/95811

お風呂の話を題材に、今回のヘイト言論がなぜ起こるのかが書かれています

運営からのご案内

以下は、運営側からのインフォメーションです。

昨今苛烈さを増しているトランスジェンダーへのヘイトは当事者や支援者に深刻な影響を与えている。ニュースへの何気ないコメント、当事者へ向けられる「素朴な質問」、あらゆる社会制度を支える区別として突然持ち出される(俗流)”生物学的”性の二元論。どこから対話を始めればいいのか、どうやって自分の精神衛生を守ればいいのか、困っている人が多いのではないだろうか。

この分科会では『トランスジェンダー入門』(集英社新書)などの著者、高井ゆと里さんをお招きし、トランスヘイトという現象をどのように考え、捉え、扱って行けばよいのかをお話し頂く。ヘイトが形成される仕組みなどを構造的に学んだ後は、実際の場面を想定した参加型ワークも実施予定。当事者はもちろん、トランスヘイトが横行する時代に生きる全ての人が心に備えておきたいことに触れられる分科会。

高井ゆと里(たかい ゆとり)

職業は研究者。専門は倫理学。存在はノンバイナリー。

訳書にショーンフェイ『トランスジェンダー問題』(明石書店2022年)。周司あきらさんとの共著として『トランスジェンダー入門』(集英社2023年)

企画者からひとこと

「女装した男が女子トイレとか女風呂に入ってきて女性の安全を脅かす」トランスジェンダーのことを話題にした時にそんな反応が返ってきたらあなたなら、どう返しますか?どこまでどう説明しますか?そもそも、そのような発言が出ないようにする工夫とは?「なぜトランス女性は女子トイレを使いたいの?」一見素朴な質問も、実は素朴ではありません。それが発せられる条件が、今整っているから発せられているのです。ではその条件とは?「こんな恐ろしい未来が待っている!」と煽ってくるヘイトにひっかかるのではなく、冷静に「現在、当事者はこのような具体的困難に置かれている」という観点で「未来」から「現在」に視点を移しましょう。

大学のジェンダー論の講師やLGBTQのゲストスピーカーで、学生や聴衆からのヘイトに晒される人が増えています。そうした人向けに高井さんが行ったワークショップに参加した実行委員塩安は、100人を超える参加数に問題の深刻さを実感しました。SNSだけにとどまらず、本当にトランスへのヘイトがリアルな日常生活に出現してきている今、これは全ての人に聞いてもらいたい、伝播すべき情報だと確信しました。今回は教育者以外の人たちの参加も想定した構成で、高井さんに講義とワークショップをお願いしています。必修科目。全力おすすめ!

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