MtFトランスジェンダーで弁護士として活躍している仲岡しゅんに話を聞く第二弾。
前回の記事最後で、自己肯定感について語った彼女、その背景と努力の方法とは?
ーー自己肯定感が低いということですが、どのようにして司法試験を乗り切ったのでしょうか?
司法試験に通らなかったらどうしようか?と考えたら、危機感を持って死ぬ気でやるしかないということですね。
ーー弁護士以外、例えば美貌をいかして夜のお仕事などは考えなかったのでしょうか?
ショーパブにも時々客として行くこともありますが、素晴らしいパフォーマンスです。そういう場で働いている方にはプロとしての敬意や憧れがありますが、自分に務まるか?というと、自信がありません。決して簡単な仕事ではないでしょう。私は踊りも上手くないし容姿も話術も優れてない…自分なんかには務まりそうにないという引け目があります。
ーーそのような中で、どのようにして目標設定を置くのでしょうか?
わたしはコンプレックスの塊です。現状を変えたい、そのためには努力しよう。具体的な対策を考える。とにかく試行錯誤です。
自分は乙女塾のように教えてくれる人がいなかったので全て独学で行いました。
ーー独学!?
例えば、声も弁護士になったばかりの頃はもっと低かったんですね。でも、電話対応が多いので、少しずつトーンをあげていく必要がありました。今では声の使い分けができるので、電話対応でまず元・男性と思われることはありません。
私の場合、裏声ではなく、地声の高さをあげていったのですが、ポイントは、
・喉を絞って声帯をあまり使わない、内緒話(ささやく)の時の声を意識し、そのボリュームを上げていく、
・イメージを作ること、例えばエレベータガールや百貨店の女性アナウンスのような声のイメージを作りました。
ーー前者はささやき法と呼ばれるやり方ですね?
そうなんですね。独学なので、そのあたりはわからないんです。
ーー事務所にはハイヒールがたくさん飾られています。ハイヒールフェチでもあるということですが。
例えば、このハイヒールを見てください。同じデザインでも高い方が美しくないですか?ハイヒールは10cm以上と決めています。日本ではあまりないデザインなので海外から購入しています。
ーー私もハイヒールオタクなので細くて高いのばかり持っていたのですが、10cm以上は足が痛くなり脱いで裸足で帰ったことがあります。今は9cm以下しか履かないと決めています(笑)。
私なら、ハイヒールを履いて疲れてしまうのなら、「履けるようにがんばって鍛えよう」となります。
今も継続的に体幹を鍛えるトレーニングや独自の柔軟体操をしています。
ハイヒールは「お腹で履く」という感覚です。腹筋をしっかり使って姿勢を良くし、マリオネットのように体がつられているような感覚ですね。そうすると、足にあまり負担がかかりません。しかし、そのためには体幹を鍛える必要があります。
また、バランス感覚や体の柔軟性も大事ですから、片足立ちの状態のままで開脚など様々なポーズを取るという独自のトレーニングもしています。
ハイヒールを履くとふくらはぎを使わなくなります。つまさき立ちのような姿勢になるので足が細くなるんです。
ーートランスジェンダーや身長の高い女性が高いハイヒールを履くと身長が気になるという方もいます。
ハリウッド女優や叶姉妹のような方々もいますよね。彼女たちは身長が高くても似合っています。身長が高いことがコンプレックスのMtFトランスジェンダーは多いようですが、背の高さを活かせる装いであれば、町で目立ったって良いじゃないと思います。
ーー今後の目標を教えてください。
仕事の面では、事務所を拡大して経営していきたいですね。
プライベートでは、これまで仕事のために全速力で走ってきたので、そろそろ自分の趣味の時間を確保したいです。仕事ばかりでは、人間としても面白くないですから。
ーーありがとうございました。今後のご活躍を期待します。
仲岡しゅんプロフィール
大阪市立大学卒、関西大学法科大学院卒。