少し前の話題になりますが、過去の性別変更を職場でアウティングされたとして看護助士の女性が病院を運営する医療法人に慰謝料など約1200万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしました。担当しているのは乙女塾でも取材した仲岡しゅん弁護士です。
2015年にも一橋大学アウティング事件としてゲイの男性が告白した相手にアウティングされその後自殺し、大問題となりました。
ところが一般の人にはなかなかこの感覚がわからないこともあるようです。これの何が問題なのか、改めて振り返ってみましょう。
アウティングとは?
wikipediaによると、「ゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー(LGBT)などに対して、本人の了解を得ずに、公にしていない性的指向や性同一性等の秘密を暴露する行動のこと。」と定義しています。実際、今回の訴訟でも原告側は「本人の意に反して性別変更を明かすことは許されず、従業員への適切な指導も怠った」と訴えています。
トランスジェンダーの多くは普通の女性として暮らすことを望んでいます。これを「埋没」といい、文字通り社会に溶け込み女性として過去の性別を感じることなく過ごしていきたいという望みです。
ところが、そこに本人の意思を考えずに、元の性別をばらされてしまうことは苦痛ですし、「埋没」を脅かすものです。誰だって人に知られたくない秘密はあり、ばらされたくないですよね。それは性の問題に限らずです。
乙女塾でも実は一番気を配っているのがアウティングです。
乙女塾でのアウティング対策
我々、乙女塾への要望としてよく言われるのが「授業の様子がわからない」「どんな生徒がいるのか」「交流会の様子を出してほしい」という意見があります。実はこれを出せていないのもアウティング対策によるものです。
一応写真は(撮影可能なメンバーには許可をもらい)山岸が撮っているのですが、ばらされたくない、ばれたくないという方のためにwebにはスタッフのみ写真を出すことでお茶を濁しているわけです。
乙女塾の生徒さんは10代から70代まで半世紀以上の開きがあり、SRSを終えている方、在職トランスの方からまだ衣類やお化粧品も持っていない初心者の方まで多岐にわたります。
美しい方、可愛い方など魅力あふれる方が多く、こんなにきれいな方々もたくさん通っているんだよ、と生徒さんのインタビューを出したいぐらいなのですが(笑)、出せないわけです。(そのうち生徒の声募集することもあると思うのでその時はOKな方よろしくお願い致します。)
さつきとアウティング
次に、スタッフが写真を出していると今度はこのように言われます。スタッフは自分でアウティングすることにためらわなかったのか?という質問です。例えば、さつきさんは埋没することも可能だったのに何故世の中に出ていこうと思ったのですか?と。
つまり、元・男性ということを公言してお仕事をするということは、自分でアウティングしているわけです。この質問はイベントなどでたびたびでたことがありこのブログでも取り上げたことがありますが、さつきの回答は「自由になれた。開放された」というような内容でした(詳しくは本人に聞いてみてください)。
私の友人でも埋没しているが、たまに元の性別を知っている仲間に会いたくなるとして同窓会的に羽目を外しに来る人がいます。
このようにアウティングについての本人の希望は様々ですが、大事なのはその事情は他者が決めることではなく本人が決めることだということでしょうか。裁判の行方を見守りたいと思います。