3月の交流会~30日のJob Rainbowまでに様々な人から就職・転職・在職トランスについて意見や経験談を聞きました。
今回は山岸撮影の写真をところどころ織り交ぜながら、トランスジェンダーの就職について不安な点と現実をまとめてみました。
1.パス度はどこまで必要なのか
当然あった方が越したことはないのですが、多くのトランスジェンダーが思う「私は女性に見えるだろうか不安」「100%女性として見られるまでは就職はしない」というほどのこだわりはいらないのではないかというのが私の頭の中に疑念として出ています。
トランスジェンダーの方々は特に完成度が高い人たちほど“120%の女性像”を望むもので当事者間で純女だと思われるのが一番難しいものです。
勿論、当たり前ですがローラさんがおっしゃるように元・男性とわかったとしても“綺麗な”“清潔感がある”といった形容詞が頭に浮かぶ容姿であるかは必要になると思います。
しかし、それはトランスに限らず第一印象として求められる機会が多いです。
それよりも、現実的に女性を見てみると意外と眉骨が出ていたり、声がハスキーだったり個人差はあるものなので全てのパーツから男性味を消し去るという必要性まではないと思います。単純に言えば、不安で下を向く、姿勢が悪くなるようならば、自信をもって受け答えする方がよっぽど大事だということですね。
2.SRSや戸籍変更は必要なのか
これに関しては戸籍変更まで終わっていないものの女性として就職しているケースはかなり多かったです。というのは、既婚者で子供がいるMtFの場合、成人するまで戸籍変更ができませんので必然的に男性のままになります。なので、優先度として最も高いか、と言えばそうではないと感じました。
SRSについては女性トイレや更衣室の問題があり当事者は厳しい目線で考えているが、実際は寛容である所が多いようです。
しかし、SRSは受ける予定である場合長期休暇が必要になります。Job Rainbowに参加していた企業の中にはSRS休暇を認めているとこともありましたが、現実的に1か月仕事から抜けるというのはなかなか自己判断が難しいところです。
田中さんがおっしゃるようにSRSを先にしておいた方が楽だし、SRSをするために前の仕事を辞めて、しばらくはお休みし体調が回復したら転職活動をするというのが1つの大きなうねりとして存在していることは間違いがないと思います。
3.学歴やスキルは必要なのか
MtFトランスジェンダーの場合、二極化の傾向があり高学歴で職歴、スキルなどが優れている場合と、引きこもりや中学、高校から社会的に接点が少ない2パターンが存在していると思います。
これは採用側も経験した私の考えですが、学歴や職歴がなくても100点満点の人間はいるし、一方で高学歴、職歴の外れもいるわけですが短い期間で見抜くことは難しいわけです。そこで、当たりを引くことよりもはずれを引かないためにそうした武器の有無=人生で頑張った経験があるほうがはずれ率が少ないというやり方で見ているわけです。
しかし、こうした「自分を磨く」というのは武器の1つになるものの、注意しなければならないのは、「武器の1つであるにすぎない」ということだと思います。結局、人間は環境によって自分の良さが出せる・出せないが非常に大きいです。田中さんもおっしゃっていたように企業は対話や協調性を見ます。
もっと言えばスキルがなくても、またフルタイムでなくても働ける職場はJob Rainbow経由で見ると普通に存在しています。例えば、共に資格はいるものの学校の非常勤講師やタクシーのドライバーなんて求人がありました。OLだけが選択肢では無いという視野の広さがあると良いかも知れません。
「私なんて…」と思ってしまう方は多いと思いますが、大事なのは面接での対応や仕事への意欲だし、ハナから諦めてしまう、もしくはアピールしすぎるというのが良くないようでした。
4.在職トランスは可能なのか?
これに関しては非常に考えさせられる問題でした。というのは、多くの当事者が仮に職場がフレンドリーだとしてもやめてしまっているからです。それは女性に変わる途中過程を見られたくないとか、自分が他者とどう接すればよいかわからないといった問題もありました。
後はヘアスタイルや服装など男性だと許されないことが女性だと許されるわけで、移行中でも髪が伸ばせたり染めたりができるのですがそれが特別扱いと見えるケースもありました。
結局は自分の気持ちの持ちよう、なのですが確かに難しい…。職場というのは家族よりもある意味で接する時間が長いわけです。言い方はあれかもですが、仕事中は男性とか女性とか性の意識よりも仲間意識というかそうしたものが上に来ると思います。となると、そこに性を意識させてしまうことや大きな変化があることはやはり一筋縄ではいかない。色々な人の意見を引き続き聞いてみたいですね。
5.就職活動時のメイクやファッションは決まりきったものを守るべきなのか
トランスジェンダーにおいてメイクやファッションが制限されることはとても大きな問題です。というのは、容姿のパス度を技術で補っていた場合“とられる”ことになるからです。
この問題に関しては時代が味方したな、と思いました。今回、化粧品会社さんのフレッシャーズブックなどをいただいたり参考にしたのですが、多くは“就活”メイクの基礎ではなくて、メイクの基礎、スキンケアの基礎でした。
聞いたところ、就職活動向けに例えばベージュのリップにひっつめ髪、靴はスムースレザーで5cmまでといった指導は今は行っていないそうです。「自分らしさを出しましょう」、といったことを出しつつも清潔感、明るさなどを与えるようにするにはどうしたらいいかといった逆説的なアプローチになっているといいましょうか、少しは自由になったのかなという印象がありました。
ただ、入社式の写真などを見るに、まだまだ社内にうるさく大変なのは入った後という会社もありますからそこは面接の時までに調べたいですね。
こう考えると大事なのは、メンタルな気がします。就職活動、転職活動は世の中の景気により難易度は変化しますが基本的に負け戦が続きます。だから、落ちてもともと、経験が積めたぐらいの気持ちが大切です。それが一番難しいのですけれど…^^;。私はプロ野球のピッチャーの精神で臨んでいます。10勝10敗ならプロ野球では年俸1億円もらえることがざらなわけです。負けがつくことはチャレンジできた証、1勝1敗ならOKと考えています。少しは楽になりますよ。
以上です。就職活動がこれから本格的になる方も多いでしょうが、吉報を聞けることを楽しみにしております。