11月のファッション交流会ではブローレンヂの松村智世さんにゲスト参加をしていただいた。
ブローレンヂはメンズサイズの可愛いお洋服をテーマにジェンダーフリーな製作を心掛けているファッションブランドだ。だが、単純に大きなサイズにすればよいわけではないらしい。男女のサイズの違いなどを解説してもらった。
男女のサイズで「どこが最も違う」のか?
乙女塾からのMEMO
- 大きなサイズの洋服を作る上で単純に拡大コピーのような洋服を作るだけでは悩みの解決にはならない。(丸井さんのインタビューにもあり)
- ブローレンヂはメンズのトルソーを使って洋服を作っているという。
ファッションポジウムでのさつき、Vネックも肩幅を隠すため採用しているという。
肩幅、バスト&ウエスト周り、ウエスト位置、袖丈、着丈が特に違うところですね。その中でも特に、「肩幅を男性が着ても楽なように作った」上で「いかに華奢に見せるか」というところが大変でした。
肩幅を直接メンズの平均サイズである45cmにすると、すごく大柄に見えてしまうのです。そこで、肩線を内側に入れて、肩のギャザーを入れて丸みを持たせて可動域を作ったりしました。ところが、これもギャザーを入れすぎるともっこりして逆に肩幅が強調されてしまうので注意が必要です。何度も調整しました。
ブローレンヂのワンピースとそのこだわり例
あとは、全体のバランスを取るのがすごく時間がかかりましたね。「肩幅を華奢に見せるだけ」「ウエストを細く見せるだけ」ではバランスが崩れてしまう。そこのバランスの取り方はひたすらちょっとずつ修正していくしかないです。目の錯覚を利用しながら、全体を見て、美しいシルエットになるまで何度も修整を重ね作り上げる。そこは、ブローレンヂにしかない強みだと思います。
大きさを隠すためにぶかぶかの洋服を選ぶことの是非
乙女塾からのMEMO
- 肩のところで切れていない洋服やドルマンスリーブのように肩幅を目立たせない洋服を着る人が多い。
- 体型を隠すためにぶかぶかの洋服を好む人は多いが大きいものを着れば必ず着やせするわけではない。きっちりしたスタイリングの方が似合う場合もある。
フレアスリーブの例、ベルーナより(実際にこの洋服が‥というわけではなくイメージ画像)
よく袖のところがふわふわしているフレアスリーブや何重にも重なったシフォンスリーブの袖を好む人がいます。二の腕を隠せるし、肩幅も目立たない。ところが、袖丈に注意が必要です。半端な丈だとかえって二の腕や肩幅が目立ってしまいます。何故だか理由はわからないのですが、実際に洋服を試作した時にそのような結果になりました。
目の錯覚で体型補正ができる
乙女塾からのMEMO
- ブローレンヂの洋服、例えばワンピースにデザインされた黒い線が体型補正をおこすという。
- 例えば、横のサイズ感を感じさせるところは縦の線、縦のサイズ感を感じさせるところは横の線を入れると緩和される。
錯視と使われている黒い線
ブローレンヂ一番のこだわりは、やはり、目の錯覚を取り入れたデザインです。しかも、いかにも体型補正のためのデザインだな??ってわからないようにデザインしています。シルエットもメンズの体型に合わせて、しかも、熟練のパタンナーさんに設計してもらっているので、着心地もとてもいい。既存のレディース服を無理して着ていた時のように、「苦しい」「動きにくい」なんてことが一切ありません。
しかし、錯視は理論上での正解がスタイリングにおいてそのまま正解にならないことがあります。目の錯覚の度合いのことを「錯視量」というのですが、デザイン上で錯視量が多いと思ったものが実際に立体にしてみるといまいちだったりもあります。
ブローレンヂのワンピース全体像
ネットでのお買い物ってサイズでの失敗って多いじゃないですか。でも、ブローレンヂはネットでしか販売していないのですが、今まで、返品交換が一回も来たことがないんです。もちろん、「返品対応」とトップページに明記しているのですが、それでもないのです。それは、皆さんが満足してくれた証ではないかと思っています。
洋服の生地が肌の質感にも影響がある
乙女塾からのMEMO
- 乙女塾なおが保有している骨格スタイル診断の資格でも生地によって個々に合う合わないが登場する。
- パーソナルカラーや骨格診断で多いのが30歳ぐらいから手持ちの洋服が似合わなくなるという年齢による問題がジェンダー問わずにでてくる。若い時は若さでごり押しができるのが・・・。
ファッションポジウムでのなお、ちりめんスカートの生地がそのこだわりの1つだ(撮影はALEXによる)
生地の質感は肌の質感への影響が大きいのです。安っぽい服は、その人自身を安っぽく、しかも老けてみせてしまいます。20代前半まではお肌がぴちぴちなので生地にぴっぱられて肌が老化して見えたりしません。
でも30代にも差し掛かってくるとそうもいきません。苦手な生地であったり安っぽい生地につられて肌まで質感が悪くなってしまうのです。そんな問題も上質な生地ならカバーしてくれるんです。
実はブローレンヂの生地は、セリーヌやバーバリーなど、世界の一流ブランドが使う生地と同じものです。それに、せっかく気に入って買ったお洋服が、ワンシーズン着ただけでよれよれになったり色あせてしまったりしたらショックじゃないですか?お気に入りのお洋服を長い間愛してほしいという思いもあります。
大きすぎるだけではない。下半身の骨格が小さいことも問題だ
乙女塾からのMEMO
- 女性ホルモンの影響で胸が大きくなる人は一定数いるが、下半身のボリュームは逆に足りない人が多い。
- 特に骨盤周りは骨の問題で整形でもまだどうにもならない部位である。
魔法のパニート(ベージュ、ブラック)
実は、『魔法のパニート』というものを現在クラウドファインディングでお金を集めています。
皆さんが苦労しているのがまずお尻です。お尻の肉があれば、自然で緩やかなカーブのシルエットが出てくるんです。ないとストンとしたシルエットになってしまいます。
次に、肩幅が広い体型の方は、腰幅を出すとウエストがくびれて全体のバランスがよくみえるんですよ。だから、横幅のボリュームはむしろ出した方が良いです。
魔法のパニート有り無しでの比較画像
ところが、(私も経験がありますが)チュールスカートやパニエなどボリューミーなものって着ると腹も同時に増えてしまうというかそこボリュームいらないんだけどという部分が増えてしまうのですが、これはそれがないですね。
二層目の生地はお腹の部分を抜いていて市販のパニエのように下腹がもっこりしないようになっています。
パニートの構造
生まれ持った体型や性別にしばられずに、誰もが自由にファッションを楽しめる世界を目指して、これからも歩んでまいります。ブローレンヂは、私一人の力ではどうにもなりません。皆さん応援よろしくお願いいたします。
外部リンク:ブローレンヂ@キャンプファイヤー
次回:制作意欲が高い松村さんだが、何故彼女はトランスジェンダー、女性の洋服を好む男性、男の娘といった人々へ向けた洋服を作ろうと考えたのか。その原点を訪ねてみた。