「以前から女性として通学するトランスジェンダーはいた」岡山大学松本先生に聞くGID治療のいま

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2020年11月にGID学会のエキスパート研修会を受けた。その中ではいくつか衝撃的な内容が含まれていた。当事者間でなんとなく思っていたこと、「パス度」のようにスラング的に使われている言葉が複数のドクターのスライド資料でも言及されていたからだ。

今回は研修会でも発表を行った岡山大学の松本洋輔医師にGID治療の今を聞いた。(取材日:2020年11月20日)

――現場ではどのような患者さんが多いのでしょうか?

私たちの患者は2~300人以上いるのですが、全体の約40%が女性から男性への性別移行(FTM)を希望する20代です。10代がその次に多く、30代になると減ります。顕著に(傾向が)表れていますね。

FTMの患者さんは50代以上はほとんどいません。また、年齢に加えてキャラクターも(ある程度)似ています。男性ホルモンが強力ということもありますから、生活するうえで困らない容姿になります。

頭が薄い家系だから男性ホルモンの影響でそうなる可能性があるといってもそのほうが男らしくていいんだなんてケースもあります。

――男性から女性へのケースはいかがでしょうか?

反対に男性から女性へ(MTF)のケースでは50代、60代もたくさんおりまして最高で80代になります。

MTFは見た目も年齢もキャラクターも本当に幅広いです。

――若い世代ではどうなのでしょうか?

幼稚園、小学校低学年で来るケースもMTFでは多いです。FTMではほとんどいません。なぜならばボーイッシュな女の子は認められているからですね。

――子供にホルモン治療をすることはないと思いますが、どのような治療を進めるのでしょうか?

トランスジェンダーは精神疾患ではないので認知行動療法をしたりメンタルのお薬を飲んでもらったりということではなくて、話をしっかりと聞きます。私は「人生の問題」だと考えています。

その上で経過を観察します。本人が過ごしやすいように周りの環境をよくしたりもしたいですね。

いざ第二次性徴が進んだ後に体毛が濃くなった、骨格が太くなったと言われたら不可逆です。となると15歳ぐらいからホルモン治療をするためには、そういった望まない性の特徴が出る前から観察しないと間に合いません。

そうすれば、第二次性徴があまり出ないのでスムースな性別移行ができます。

――となると、親も子供の性別移行に協力的なのでしょうか?

スカートをはきたいといってそれに合わせる親もいますし、ほかの病気でかかった病院などで岡山大学を紹介されてきたというケースもあります。それでも何十人です。

カナダのトロント大学では毎年数百人の子供のGID治療を行っているといいます。それでももっといるはずです。言い出せないか、我慢しているのか…そういう子供たちが多いと思います。

――MTFは第二次性徴を迎えた後から治療する場合に骨格、体毛、声など不可逆な要素が多いです。その見た目から就労差別などの問題につながっているという意見があります。

その辺は社会が変わっていくしかないと思います。産業医などがいれば我々から勤務先の医者に理解を求めたりということはあります。

それでもあとは会社が話を聞いてくれるかです。はなから話を聞かないというところも多いです。

学校ではより関心があるので、職員や生徒にトランスジェンダーが出たとなれば話を聞きたいというケースがあります。今後出るかもしれないので研修してほしいということも多いですし、我々も勧めています。また、自助団体に連れていくこともあります。(当事者の存在を)知ってもらうためです。

――今後、日本が変わる第一歩として何が考えられますか?

やっぱり学校だと思います。例えば制服は小学校から男の服はこんな服、女の子は赤いランドセルで~とか、そこのルールですね。画一性で刷り込まれてしまっている。

先生は管理しやすいのかもしれないけど、そこにのっからないお子さんはいて悩んでいてでも言い出せなくて。だから、私たちのところに20代以降になってやってくる。

だからこそ、そこが変わるのが1つの鍵かなと思っています。

――女子校がトランスジェンダーを受け入れたというニュースも見かけるようになりました。

昔は、高校、大学とかもトランスジェンダーの生徒が進学したら「どうしたらいいんですか?」と電話がかかってきました。それももう10年ぐらい前の話です。今はもうめっきり引き合いが減りました。これが小中学校にまで引き下がるといいなぁと思います。

この3-4年はすごく反応が変わってきたなと学校で研修していても思います。すごく話を聞いてくれたり先生方ももう研修を受けていたり。そういう中で教育を受けた生徒が卒業して社会に出たころには変わるんじゃないかなと思っているんです。10年、20年先かもしれないですけれど。

女子大へのトランスジェンダーの入学は公式に声明を発表したのが何校かありましたが、それ以前から入学をされているケースはあったそうです。

――中学や高校ではジェンダーレスやジェンダーフリーな制服が登場したり多様性が叫ばれています。

私は自由にすればいいじゃんと思っています。でも、いきなり私服というのは難しいのでワンクッション置く意味でもそうした制服があってもいいんじゃないかと思います。

また、制服メーカーさんがそうした制服を売り込むことによって、校長や学校がLGBTQの問題をとらえるきっかけになっていますね。

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