2023年6月14日、WAN（認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク）を通じてフェミニストたちがトランスジェンダーへの差別を憂慮して、連帯を呼びかける声明を発表しました。声明では、日本のフェミニズムの根幹をつくとの呼び声も高い元・東大教授の上野千鶴子先生らが連名で名を連ねています。先生の研究室は現在、WANの中に設置されています。
LGBT理解増進法を取り巻く現状
「LGBT理解増進法」が本国会で成立した中で保守派、一般人、知識層、当事者等と様々な意見が出ました。その多くはトランスジェンダー、特にトランスジェンダー女性に対するヘイトで、この状況に心が苦しめられた人も多いと思います。
特に、法案には一切言及のない「心が女性と言えば、身体が男性でも女風呂や女性トイレに入れる」といったデマが流れ、未だに著名人すらこの法案に対してそのようなオピニオンを流しています。
フェミニストが初めてLGBT理解増進法について言及
WANは声明の中で、「４党合意案にある、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意」という文言が入ったことで、マイノリティの権利保障に向けたはずの法律がマジョリティの権利尊重を謳うことになってしまっています」と述べています。
SNSを中心に不安を煽るような言説が広がっていましたが、LGBT理解増進法ができると「身体的には男性の人が『心は女性』と言えば女性風呂に入れるようになる、それを拒めば差別だとされるので拒否できない」などという発言が頻出しています。このような事実誤認や偏見が広がることで、 モラルパニックが起き、その結果、トランスジェンダーへの憎悪がますます強まっていることを懸念します。
特に問題となった風呂・トイレ問題についてハッキリ明言をしています。
フェミニスト
twitterをはじめとしたSNSでは、自称フェミニストがトランスジェンダー女性に対する脅威を述べることが多いように感じます。
一方、WANはフェミニストとしてそうした動きを懸念し、シスジェンダーの女性だけの安全を求めるのが真のフェミニズムではないと言及します。
わたしたちはフェミニストとして、女性の不安を煽る言説が拡散している状況を深く憂慮し、フェミニストのあいだでもそのような動きがあることを懸念します。女性の安全と権利を求めてきたフェミニズムは、シス女性だけの安全を求めるものではありません。言うまでもなく、トイレや公衆浴場はだれにとっても安全であるべきです。女性の安全が十分に守られていない現状が問題であり、性暴力被害者への支援や性暴力を防ぐための法整備が強く求められます。
一方的にシスジェンダーの女性に恐怖を生んでいる根源を考え、それを除去すべきだと主張しています。
結局、トイレやお風呂問題については性犯罪者が問題なのであり、シスジェンダーの女性、トランスジェンダー女性は共に被害者になる立ち位置になります。また、ジェンダーレストイレの動きもありますが、この法案によって女子トイレがなくなるという事実はありません。
何故、トランスジェンダー女性がヘイトされるのか
そもそも何故フェミニストを自称する人たちがトランスジェンダー女性のことを怖いというかというと、男性への恐怖があるからです。
男性の方が性別で見ると性加害者が多いことが理由だと思われます。そして、トランスジェンダー女性のことを「（大きい、ごついなど）ルックスで見分けがつく異質なもの」として捉えているからだと思います（ルッキズムの問題は深くは割愛させていただきます）。
問題は、性犯罪者を取り締まること、そして、性犯罪者を産まないように社会にすることだと声明では述べています。
声明を発表したWANのウェブページでは賛同人を募集していると同時に、自認する性別に従った施設利用の可否に関する、裁判の事例をもとに様々なジェンダー別施設の利用実態の考え方や、400ページ近いトランスジェンダー関する論文も公開されています。
このサイトで述べられていることをに賛同できるのであれば、ぜひ賛同人に名をつらねていただき、フェミニストとトランス女性が女性同士としての連帯をして欲しいと思います。この記事は特にシスジェンダーの女性に読んでもらいたいと思って書きました。
自分を女性と認識しているトランスジェンダー女性は、女性を傷つけたいとは思っていません。女性も男性も、みんなが安心して暮らせる社会を共に作りたいと、当事者のひとりとして思います。
緊急レポート：LGBTQ＋への差別・憎悪に抗議するフェミニストからの緊急声明
https://wan.or.jp/article/show/10674#gsc.tab=0
立石結夏・河本みま乃「男女別施設・サービスとトランスジェンダーをめぐる問題」
https://www.web-nippyo.jp/23123/
