京都耳鼻咽喉音聲手術医院にカウンセリングへ行ってきた その1:声の手術ってどんな術式があるの?

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先日、声帯手術のカウンセリングのため「京都耳鼻咽喉音聲手術医院」に行ってきました。

実際にカウンセリングを受けて得た知識を、同病院の東家先生にチェックいただきました。2記事に分けてお届けします。

今回の目的は、私たち乙女塾のキッチン担当である「ゆーこ」も手術した「輪状甲状軟骨接近術IV型」や「ウェンドラー式声帯短縮術」のカウンセリングを受けるためです。

これまで国内では「ウェンドラー式声帯短縮術」の話を聞くことはなかったのですが、ここ1、2年「京都でウェンドラー式声帯短縮術を受けられる」ことは、トランスジェンダー当事者の間では話題になっていました。

声を高くする手術の概要

乙女塾では、同病院の東家先生にも協力いただき、これまでに数多く声の手術に関する記事を公開してきました。

まずは以下の記事をご覧ください。

声の手術に関しては「3パターン」が主にあります。

・輪状甲状軟骨接近術IV型
・ウェンドラー式声帯短縮術
・甲状声帯襞縮小手術

「ウェンドラー式」は欧米、「甲状声帯襞縮小手術」は、タイのヨーサガン病院で採用されている手術法としても知られています。

(もちろん病院によっては複数の術式から医師の診断の上で選ばれることがあるので、例えばヨーサガンへ行ったからといった必ず「甲状声帯襞縮小手術」が受けられるわけではございません)

これまで国内では、「輪状甲状軟骨接近術IV型」以外は受けられませんでした。そんな中で「京都耳鼻咽喉音聲手術医院」が「ウェンドラー式」を手掛けるようになったことで、選択肢が増えたのです。

SNSでシェアされていたモデルケースもたいへん好評でした。

この際に私たちもカウンセリングを受けようと思い、関西へ行く機会を見計らって予約を入れたのです。

カウンセリングを受けた2名

今回は同じ声の悩みを抱える2名で向かわせていただきました。

私自身は、過去に「新宿ボイスクリニック」でもカウンセリングを受けており、声の病院はこれで2件め。同行したもう1人は初のカウンセリングになります。

今回の受診者の声に関するデータは、以下のとおりです。

筆者(NAO):

・元々の地声が80Hz、ふだんは100-120Hz程度

・外出先や人前などでは、外見状の男女の状態に関係なくピッチをあげてしゃべっている

同行者:

・元々の地声120-130Hz、ふだんは180Hz程度

・外出先や「よそ行きの声」だと220-230Hz程度でしゃべっている

「もう少し女性らしいHzになりたい」または「低い声がでてしまうことを意識することなく過ごしたい」というのがカウンセリングテーマになります。

カウンセリングの費用は22,000円。手術費用は、2023年4月以降は「SRSを終えている・いない」「戸籍が変更されている・しない」に関わらず、すべて自費診療となっています。

それでは、手術方式を見て行きましょう。

手術方式1:輪状甲状軟骨接近術IV型

甲状軟骨を真ん中より外側で部分的に切除し、輪状軟骨と甲状軟骨を接近させることにより、声帯に緊張を与えて声の高さを上げる手術です。

(画像提供:https://www.kyoto3387.jp/

メリット

・手術中にも自分の意識があり、声の高さを自分で決められる。(240-320Hzぐらいに設定することが多い模様)
・局所麻酔ですむ
・SRSを終えて戸籍変更をしている場合は、保険適用の対象となる病院もある
・喉仏もいっしょに切除することもできる
・手術後の発声禁止期間が短い ・手術の結果が気に入らない場合、術後早期であれば元に戻すことができる

デメリット
・手術後から声が安定するまでの間、高い声の状態が続くため、ボイストレーニングはやはり必須
・首に手術のあとが数cmほど残る
・いわゆる「のどを締め上げて」喋っている人には、あまり向かない
・低い声が出せなくなるので、出せる声の範囲が狭くなる

ウェンドラー式

高い声は、声帯が短いほど出しやすくなります。そこで、声帯を1/3ほど短くすることで、声を高くする手術です。ヨーロッパで考案されました。

声帯を短くする幅がある程度決まっています。1/4や1/5ではあまり変わらず声も高くなりません。しかし1/2では短くなり過ぎて、今度は声が出しにくくなります。

メリット
・50-100Hz前後ピッチがあがる
・喉仏もいっしょに切除することもできる
・ピッチの上も若干持ち上がる(低い部分はカットされるが声域自体が少し上に行くイメージ)

デメリット
・手術後にどんな声になるか、事前に確認できない
・全身麻酔が必要になる
・手術後は1か月発声禁止となり、慣れるまで数ヶ月は必要。
・発声禁止期間の後は、ボイストレーニングが必須となる
・声帯に「瘢痕(はんこん)」ができた場合、声を出すことが難しい、かすれるなどがあるが、治療が困難なケースも多い

・のどを締め上げている喋っている人にはあまり向かない
・SRSや戸籍変更に関わらず、自費診療となる
・手術後の声質が変わり、医療的にいうと「かすれ声」、いわゆる「ハスキーな感じ」の声になる
・裏声を出すとき、力を入れないと出にくくなる場合がある

効果が出にくい人がいる

どちらの手術法であっても、以下の条件に当てはまる方は、手術の効果が出にくいといわれています。

・無口やコミュニケーションが苦手などで、声を出す頻度が少ない方(対策:1人でできるトレーニングメニューをこなす)
・いわゆる「のどを締めて」しゃべることが多い方(対策:輪状甲状軟骨接近術IV型に加えII型を行うことがある)

また、ウェンドラー式は病院によっては以下の人は受けられません。

・すでに「喉仏除去手術」を受けている方

それでは、実際のカウンセリングではどんなやりとりがあるのか、これからいっしょに見ていきましょう。

話を聞いた人

医師

東家 完

京都耳鼻咽喉音聲手術医院

2005年に熊本大学を卒業。同大学にて音声学の基礎を学び、声帯の動きを制御する神経学分野で博士号を取得。その後、音声学のメッカである米国ウィスコンシン大学に留学し、声帯粘膜の再生に関わる研究に従事。帰国後、同大学助教を経て、2017年に医療法人顕夢会ひろしば耳鼻咽喉科(現・京都耳鼻咽喉音聲手術医院)に入職。音声外科部門長として、国内外問わず、声の悩みにとことん付き合う医療を展開中。

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