無印良品の「性別のない服」が炎上、「性別のない服」とは性差をそぎ落とすことなのか考えてみた

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無印良品が発表した「性別のない服」がネットで炎上しています。

ツイートを見てみますと、「人民服」「囚人服みたい」「なぜ、性別のない服なのに男性側のほうに女性がよるのか」「ださい」といった批判が多いようです。

何故、男女差をそぐと男性性よりのシャツ、ズボンで「人民服」「囚人服みたい」なスタイルになったかは興味深い内容ですがそれは置いておき、ここではLGBTサイドからジェンダーとファッションについて見て行きます。

ビジネスとして「よくある失敗」と推測

今まで乙女塾を通して何度かジェンダーと紐づいたファッションのイベントに携わったご縁もあり、定期的に個人の考えをしたためておりますが、私的に言うと「大きな企業が行うビジネスとしてのよくある失敗」ではないかというのが私の考えです。

古くから力を入れている会社ならまだしも、広告代理店がLGBTやSDGsといった単語を推しているし「流行ってるからジェンダーフリーやノー・ジェンダーを目指してみるか」としか感じられないプロジェクトがたまにみられます(今回のがそうだとは言いませんが)。

そうでなくても、「ジェンダーフリー」や「LGBT」に賛同している人や会社ばかりではないんですね。思ったほど協力を得られない、批判があったなどの結果、消極論、妥協案がでてきます。

結果、「ジェンダーフリー」を目指したはずが「ジェンダーレス」や「ユニセックス」になっていきます。「ジェンダーレス」や「ユニセックス」が悪いのではありません。意図しないジェンダーレスほど微妙なものはないんですよね。

「ジェンダーフリー」や「ノー・ジェンダー」の取り組みは珍しいことではなくなりましたが、ニュースを見て期待してそのブランドやイベントに足を運んだら期待外れだったということは結構あります。実際我々自身が何かやるときも協力を得るという行為がいかに難しいかは痛感しています。

ノームコアブームと共に人気となった無印良品の衣料品

無印良品のこの洋服の是非はともかくとして、無印良品の衣料品の人気は近年ずっと高いものがありました。

これはノームコアというスタイルの流行が理由にあげられます。大雑把に言うと「普通」「シンプル」「カジュアル」な「究極の普通」スタイルです。

かつてファッションは原宿のたけのこ族しかり渋谷のギャルしかり個性を発揮する場所でした。しかし、今は個性を発揮しないために協調する場所でもあります。オシャレは特別なものではなく如何にソツなく仕上げるか。無地のTシャツに青いデニムにスニーカーなんかが一番良いじゃん、となったんですね。

ユニクロなどがその代名詞ですが、無印良品もその流れにのりました。もちろん、ノームコア=安いではありません。ハイブランドでもコモリ、オーラリーのようにノームコアブームと共に人気がより高まったブランドもあります。

ノームコアはシンプルでカジュアルなスタイルゆえ男女差は余りありません。そのことから、ノームコアはユニセックスな部分もあります。

近年はハイテクスニーカーをはじめスポーティでオーバーサイズなファッションがトレンドの中心に来ていますが、スポーティなファッションやリラックスなファッションというのは着心地の良さもあり男女ともに受け入れられています。そして、ハイテクスニーカーなんかも性差の少ないアイテムと言えるでしょう。

売り場に行ってみた

実際、売り場に行くともう取り外されたのか「性別のない服」というアピールは全くありませんでした。うたわれている機能素材は良さそうで整体やカイロプラクティックの際の作務衣に良さそうです。

また、Twitterで炎上したのは最近ですが1月から定期的にこのシリーズが続いています。取り組みとしては非常にガチなので歓迎したいところですが…。

詳しくはここ:https://www.muji.com/jp/mujilabo/

良いと思ったことはサイズ感、年齢、体型を意識させない点です。

気になったことはそのシンプルすぎるデザインです。すべてズボンルック、ノーカラーか襟小さめ。「性別のない服」=究極に性差をそぎ落とすことと捉えらえても仕方ありません。

トランスジェンダーが望むのは中性的な服ではなく女性的(男性的)な服

本題に戻りましょう。

問題なのは誰が「性別のない」服を求めているのか、ということです。近年はトランスジェンダーやLGBTに配慮ということ以外にもりゅうちぇるやぺぇ、MATTのように性を超越したような人も多くでてきています。しかし、彼ら彼女らはどちらかというと個性的な服を好みますよね。

しかも、トランスジェンダーの多くはMTFであれば女性的な可愛い・綺麗な服が着たい、FTMであれば男性的なかっこいい服を着たいと望んでいるのですね。仮に中性的な服や性差のない服が着たいとしてもそれは「移行初期に平穏な生活をするためのアイデア」かSRS後に達観した末のスタイルチェンジであることが多いです。

なので、LGBTの配慮としてユニセックスを提示するというのは「考えてくれてありがとう。だけど求めているものとはちょっと違うんだよね」、という意見が多くでます。そうなると商業的に成功しないので「LGBTやSDGsって流行っているというけどお金にならないじゃん」という形でビジネスが単発で終わってしまいます。

では、この「性別のない服」はどこに需要があるのでしょうか。サステナビリティやエシカルといった環境に配慮をする人たち、MtX、FtX、ノンバイナリーの人は喜びそうだと思いましたがそれもステレオタイプ的決めつけな気がします。その層を狙ったようにも感じません。

メンズライクという言葉はあってもレディースライクはない

「ジェンダーフリー」や「ジェンダーレス」という言葉は置いておき、もっと言えばLGBTやSDGsもあっちに追いやって、大事なことは「誰もが自分が良いと思った洋服を着られるように」ということです。

現在のファッションシーンではサイズ展開の少なさやフロアを年代、性別などの「見えない壁」で切り分けていて買いに行きにくいからです。メンズライク、女性が男性の服を着る提案はあってもレディースライク、男性がレディースっぽい服を着る提案はないからです。

今回の無印良品の性別のない服というのはそうした問題を解決する意味で年代、サイズ感、性別関係なく買いにいきやすいわけで価値はあると思います。

しかし、すでに無印良品は男女差がすくないんです。ネットストアで紳士服、婦人服ってわかれているのが不思議なぐらい。店舗ではスニーカーとかサイズごとに置いてあるだけですしね。だからすでに買いやすいし、ジェンダーフリーはある程度かなえられてるんじゃないかと思っているんです。わざわざ取り組まなくても「ありがとう、無印さん」という感じです。

わざわざ「特別に」取り組まなくても無印良品の衣料品は性別やサイズを問わず誰でもwelcomeですよ、じゃダメだったのでしょうか。

着たい服がレディース(メンズ)だけどまぁいいか

まとめると、意図的に男女差をそぎ落とす服というのはファッションとしてみると面白い取り組みだと思いますが、大手が大きなビジネス(量産するアイテム)でやってしまったことでつまらない方向に進んでしまった、性別がないということは性差をそぎ落とすことでもないというのが今回の私の見解です。ただ、整体の時に着る服としては本当にいいと思います。

私のようにモードファッション好きには「ノー・ジェンダー」「ジェンダーフリー」は特別なことではありません。すごい好みのデザイナーがいるけどレディースしかない(メンズしかない)ならそれを買います。着たい洋服がたまたまレディース(メンズ)だけど似合うからまぁいいか、それが普通になる世の中は近くて遠いのでしょうか。

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