映画『片袖の魚』のパンフレットに記載がありました「マイクロアグレッション」という言葉をご存じでしょうか?
私が最初に聞いたのは精神科でした。「心理学の用語なんだけど」と先生が前置きして私に説明してくれたのです。
学術用語ですから普段耳にする機会は多くないと思います。でも、説明を聞いたら「私も見覚えがある」「経験がある」と思うでしょう。今回はマイクロアグレッションの解説をいたします。
マイクロアグレッションとは?
日本語に直訳すると「小さな攻撃」、また「あいまいな攻撃」「繊細な攻撃」などと訳す人もいます。
アメリカの精神医学者チェスター・ピアスによって提唱された言葉で、差別するつもりや否定するつもりがあるかどうかは別として、何気ない日常の言動の中で文化的だったり社会的に疎外された人たちを傷つけてしまったり、もやっとさせてしまうことを指します。
例えば、黒人に対して「ダンスがうまそう」とか、韓国人に対して「辛いの得意なの?」というのも人によっては傷ついてしまいます。
なぜそのような言動があるのかといえば、無意識に偏見や差別感、無理解があるからですね。
トランスジェンダーに対するマイクロアグレッション
トランスジェンダーは子供のころからこうしたマイクロアグレッションにさらされる機会が多いようです。
「どの女の子が好き?」とか「彼は~」「男の子だから~」とか性別・性志向を決め付けたものは代表例でしょう。
それだけではありません。相手が気をつかってくれた、ほめたつもりの言葉も人によっては傷つきます。
「大丈夫。女の子みたいだよ」とか「トランスジェンダーって男女両方のきもちがわかるんだよね」とかですね。
感覚としては毎日小石をあてられているようなものでしょうか。
精神科での話では「トランスジェンダーの自己肯定感が低くなる、自信を喪失する原因になっている可能性」を指摘していました。
大事なことは言語化すること
マイクロアグレッションという言葉は知らなくても、子供のころから投げかけられた言葉で傷ついたという人は多いでしょう。
大事なことはそうした概念を「言語化」することです。何も知らない人たちも「マイクロアグレッション」という言葉が伝われば少しは理解することにつながるからです。