年末に早稲田大学でイベント『「女性らしさ」を超える~本当の自分に出会うために~』が行われました。
イベントの概要は以下のようなものでした。
メイクの可能性を最大限に――。現在、トランスジェンダーが生きる中で、「パス度(自分の表現する性別が、どれくらい周囲から認識されるかの度合い)」のトピックは、最も大きな課題の一つである。そして、トランスジェンダーだけではなくほとんどすべての人は、「他人からどう見られるか」と「自分がどうありたいか」の中で葛藤し、日々「見た目」や「身体的特徴」と向き合うだろう。本イベントは、「見た目」問題に日々向き合い続ける二人のトランスジェンダー女性(※)のお話を聞きながら、「自分らしさ」について考えていくイベントである。また、実際にメイクをリアルタイムで施しながら、「女性のもの」とされてきた「メイク」が、「性別」に関わらずヒトの可能性を広げる存在となりえるかについて、トークセッションをもとに探っていく。
乙女塾ゲストにも登場して下さったトランスジェンダースピーカーの瞬さんが中心となり、資生堂のメイクアップアーティストである石塚さん、ファッションポジウム以来にお会いしたごけんさんと豪華なメンバーが揃いました。このイベントは乙女塾とは別ではあるもののさつきが登壇し、なおと山岸は裏方で参加させていただきました。
真面目なレポートはこちら
https://www.waseda.jp/inst/gscenter/news/2019/02/05/2064/
ここからは不真面目なレポートです(笑)。
このイベントはもともとはもっとパス度やトランスジェンダーならではの悩みについて切れ込むイベントになるんじゃないかと想定していたのですが、「メイク」という言葉を皮切りに「自分らしさ」という広いテーマで問いかけるイベントになりました。
元々、さつきは上に貼り付けたThe Party Busの動画を見て衝撃のラストに震撼しながらも、それをあくまでお洒落な動画という範疇で見せているところに共感を覚えたそうです。当事者だけでなく一般の人にも伝えるために…資生堂の協力が得られたことで動画は会場でも流され製作者のインタビューなども交えながらイベントは始まりました。
日本にはフランス語などのようにものに男性、女性名詞のようなふりわけはありませんが、「メイク」というのは女性のものというバイアスがかかった最たるもののだと思います。
それゆえ、非常に近寄りがたく、また勇気がいる行為ではないでしょうか。最初は手が震えたり、メイクをすることで興奮した人もいるかもしれません。今回は瞬さん、さつきさんがメイクとの出会いや経験を話しておりましたが、やはりそうしたトランス初期での努力は誰しもが体験し乗り越えていくことだと思います。
実際に、資生堂の石塚さんがごけんさんにメイクをするショーも開かれましたが、ごけんさんの綺麗且つかっこいいこと、見事大役を務めてくれその可能性を指し示しました。
また、資生堂はこの日大量のプレゼントを持ってきてくれておりまして、抽選で化粧品が当たるという年末の忙しい中で頑張って来られた方は「ラッキー!」と思わず叫ばずにはいられなかったのでしょうか?
メイクの力というものを感じた時間だったと思います。
ここからは私的に時間があれば話はこう進展していったんじゃないかなぁと思ったことを個人的に推測して話を閉じます。
日本という国ではメイクは女性という言葉以上のバイアスがさらに細かくあります。スチュワーデスであれば髪はまとめてメイクは濃いめ、マット、OLさんはベージュなど彩度が低く落ち着いたメイク、結婚式の来訪者のほとんどはアップヘアといった印象を持っていると思います。
そうしたステレオタイプ的な像と他を許さない村社会的な部分は、裏を返せばそのステレオタイプに自分をあてはめればよいわけで「パス度」という尺度では利用できるツールとなるのですが、自分らしさという問いに対しては非常に狭い選択肢であると思います。テストで言えば、記述問題ではなく、選択問題になっているような印象です。
瞬さんはこのイベントを通したブログで最後に
誰かが勝手に決めて広まってしまっただけで本当は存在しない
“女性らしさ”でも”男性らしさ”でもない、
“自分らしさ”に誇りを持って欲しい。
メイクは私をそうさせてくれたし、
少しイベントのテーマに矛盾するかも知れないけど、
男性として生を受けたからこそに、
私にとってメイクは、自分が女性である事を実感させてくれて、
女性としての自信を与えてくれるものです。
「メイク」と一言に言っても特殊メイクでライオンになるのも、スポーツ観戦で日の丸を入れるのもメイクなわけです。それこそ美容とファッションですら行うメイクは違ってきます。スポーツ観戦では男性も日の丸を入れるのに違和感はないわけです。
一方、トランスジェンダーだからといって全員がメイクが好きなわけでも女性らしいファッションを求めるわけでもありません。メイクはマナーみたいな風潮から、どうしてもパスするため、つまり会社で浮かないだとか、おばさんとして見えるだとか、そうしたツールとしてメイクは覚えるべき義務みたいになってしまうケースがあります。人は見た目が8割と言う人がおりますから、そこはメイクはパスにおける補助輪みたいなものだと。
さらに、その先の理想の姿や自分らしさを追求するための触媒としてメイクは手軽なもの(ダイエットは時間、整形はお金がかかりますからね)なので、そんな可能性を垣間見せたようなイベントだったのなら良かったなぁと思いました。
決してさつきのツインテールに萌えて撮った写真をたくさん掲載したいわけではないんですからね。
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