サリー楓インタビュー 映画『息子のままで、女子になる ~you decide~ 』公開を終えて(その2)

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前回に引き続き映画『息子のままで、女子になる ~you decide~ 』で主演を務めたサリー楓のインタビューをお届けする。

サリー楓がトランスジェンダーとして行動を移す最初のターニングポイントは「乙女塾の1日体験コースがきっかけ」と話していた。ボイス担当の西原さつきとメイクアップ担当のNAOがサリー楓に当時の回想を交えながらインタビューを行った。

(インタビュアー:西原さつき(ピンク色)、NAO(緑色))

――前回までは映画とトランス前の話でした。今の姿になって楽しい時って、どんな瞬間?

洋服を選ぶ瞬間が楽しい!メンズの洋服を着ていた時は自分の着たくないものからマシなものを選ぶ、っていう消去法だから、テンションは上がらない。

でも、レディースを選べるようになってからは、自分の好きなものを自分の意志で選んでいる感覚で、選ぶのが楽しい。

――楓ちゃん、ファッション好きだもんね。今日の洋服のポイントは?

今日の洋服はブローレンジ(ジェンダーフリーなファッションブランド)のブラウスです。


(着用していたブローレンヂのブラウス)

――ありがとう。話が少し戻っちゃうんだけど、映画で印象的なシーンがあって……画面が暗転して「自分の声をどう思いますか?」というシーンがあったと思う。ちなみに、楓ちゃんは自分の声についてどういう印象がある?

ラジオとかテレビに出ると自分の声を聴き返すのが苦手です。スピーカーを通して聴く声は違うんです。なんか、やっぱり男っぽく聞こえてきます。ボイストレーニングはしていないので、そんなに昔と変わっていないんです

声が低いとかは全然いいんですけど、無理に高い声を出そうとすると、がさがさした感じがある。そういった声を滑らかな発声にしたいです。聞き取りやすい声も出してみたい。

マイクを使って話すと、声を高くして話すと無理やり出している声になってしまい、聞き取りにくいと思っています。それに大きい声も出せなくなるし、滑舌も悪くなりますね。

――サリー楓のボイトレ企画をやってみたくなった(笑)。話し方ってコツがいくつかあって、口角をあげておくのも良いよ。それから目の下あたりの、頬の高い位置で声を整えるイメージを持ってみて。そうすると声が通るようになっていくから。

ニュース番組に出させていただく機会も少なくないのです、視聴者の方が聞きづらくないか心配で……。ボイストレーニングで声を変えられるなら変えたいですね。

――声、私もコンプレックスだったな。ちなみに私たちは、最初に生徒の方にアンケートを取ってるの。参考にしている人や憧れの人を記載する欄があるんだ。その中でも、最近は「サリー楓さんのメイクとかファッションとか参考にしています」って書く人が増えてるんだよ。そんな、楓ちゃんを意識している人がたくさんいる中、これからトランスを始める、もしくは悩んでいる人に向けて何かメッセージはある?

最初は女性になりたい気持ちが強いです。だけど、慣れてないうえに知識もないです。そのような状況では、自分が思っている偏った女性像の中でメイクやファッションを選びがちになってしまうかもしれないです。

分かりやすく表現すると、私にとって「峰不二子」のような女性像をもっていました。アイラインを濃くして、まつ毛をできるだけ長く、チークを濃くして……みたいな。服とかも露出が激しいファッションになっていて、今振り返ってみると、アンバランスだったと思います。

メイクも服もいかに女性らしく見えるか、女性らしさという鎧を着ているような感覚です。

そういった、好きなファッションを一通りやってみるのもいいと思います。でも、一通り試してみたら深呼吸を一度してクールダウンする、素直に外部の意見を聞くのが大事だなと思います。

自分は客観的に自分を観られるようになるまでとても時間がかかりました。ドキュメンタリーを撮って、自分がどういう風に見えているのか初めて気づきました。

――たしかに……メイクはいつか言おうと思っていたんですけど、ノーズシャドウはちょっと濃すぎた気がします(笑)ただ何年も言いそびれているうちに、だんだん楓さんのメイクが柔らかくなっていきました。客観的に見て色々と思うことがあったのでしょうか。

人からメイクについて言われる機会があって「このチーク濃すぎだよー」とか「青色のアイシャドウ似合ってないよー」とか言われて。でも、当時は自分にとってそれが女性らしさだと思っているから「そんなことないと思うけどなぁ」って気持ちでいました。ただ、一度クールダウンすると「確かに他の色の方が似合っているな」とか思えるようになってきたんです。

色んなメイクやファッションを知ったうえで、この世界に浸ろう、って。書道の「守・破・離」ではないんですけれど。

そのうち、経験も重なって自信がついてきたんです。メイクがだんだん薄くなってきたり、Tシャツとかデニムとかラフな格好も増えてきました。そういう意味で自信がついたのかなぁと思います。

――映画の中で、はるな愛さんの「(楓ちゃんは)戦いすぎている」という言葉が印象的だった。映画やミスコンも終わって、肩の力が抜けて、今はナチュラルだね。メイク薄くするのは抵抗あるかもしれないけど、私は今の方が好きかな。

乙女塾とかで教わったし、今はYouTubeの動画とか見たりしながら復習してる。メイクはいろんな裏技があるんだね。それにメイクを足し算していくのは簡単。

でも、その逆の引き算するメイクはとても大変で。いつものメイクから何を引算するのかが難しい。抜いてしまうと、理想的なメイクの仕上がりから遠くなってしまうんです。

コンプレックスが目立ってしまうんじゃないか、と思っちゃう。だから今は、例えるならテーブルゲームのジェンガを抜くような慎重さで少しずつ減らしてます。

――そんな中、今改めてコーチのスティーヴンに「あなたは自身が美しいと思っていますか?」と、出会った頃と同じ質問をされたらどう思いますか?

核心的な質問ですね(笑)。でも、今もまだ「You Decide(ユーディサイド)」。映画を一本撮ったぐらいで自信満々にはならないです。私は今でも成長の段階にいると思っています。

――楓ちゃんの旅は、これからだね。次は声も一緒にトレーニングしよう。

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