女性医師が語る「SRS後の不調とその対処法」

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2021年春のGID学会に出席して驚いた。既知の女性泌尿器科の先生が発表をしていたからだ。

しかも、その内容は「SRS後のダイレーションによる不調」によるケーススタディであった。長らく、トランスジェンダーにおいてSRSをすることは1つのゴールのように思われてきた。

ところが、10年前や20年前に比べてSRSまでたどり着く人が格段に増えてきたことで、その後の問題も少しずつ知られるようになってきた。特にSRS後の身体の状況については長期経過について報告した例はほとんどなかった。

今回はGID学会で発表を行った女性医療クリニックLUNAの関口由紀理事長に話を聞いた。

(取材日:2021年5月)
(インタビュワー:NAO、西原さつき)

(左から関口理事長、西原さつき(乙女塾)、池袋真医師、笹岡理学療法士)

ーーSRS後に不調を覚えても見てくれる病院がないことは問題になっています。私たちもアテンドのソフィアバンコクさんの紹介で先生と最初に出会ったわけです。何故トランスジェンダーの治療をするようになったのでしょうか?

関口医師(以下、略)元々はFtMトランスジェンダーの患者さんが男性ホルモンをうちに来ていました。MtFトランスジェンダーの患者さんが少しでも安かったり、近い病院に流れていってしまうのに対して、FtMの人たちは1度決めた病院に長く通ってくれるんですね。

そのうち仲良くなった患者さんに、パーティーみたいなものがあるから来る?と誘われたんです。それで面白そうと思って行ったのがソフィアバンコクさんの会でした。その時にMtFトランスジェンダーの人と知り合いました。

まもなくして、彼女がガモン病院へSRSへ行くというのです。それでタイへ同伴し視察をしました。

ーー知り合って、タイにまで行ってしまうのが女性誌でも活躍している先生らしい行動力といいますか(笑)。

面白いなと思ったのはこれまで研究されていないジャンルということです。自分たちでいろんなことを考えて試して新しい学問を作るような。

ーー先生はGID学会でSRS後に作った腟が大量出血しているケースを報告しています。

はい。SRS後に不調を訴えて病院へ来るケースがあるのですが、我々は2つの問題があると推測しています。

1つは腟を最低12cm以上の深さにしようと無理にダイレーションをするケースです。実は女性の腟は8cmもあれば性交渉で問題がないんです。なので8cmでいいのではないか?と考えています。

ーーそれは腟が一度狭窄してしまうと深さは戻らないとか、腟の伸縮性がないので日本人の男性器の平均の深さが欲しいといったトランスジェンダーにだけ伝わる言い伝えみたいなものがあるからですね。

女性の腟もSRSで作った膣も人間の皮膚や粘膜であることは変わりがありません。なので伸びるんじゃないかと思っているんです。

(腕の皮膚をひっぱって)伸びますよね?

無理して大量出血をしてまで腟の長さ以上のダイレーション棒を突っ込む必要はないと考えました。

ーータイでも病院によって考え方が違いますが、ガモン病院ではかなりスパルタです。10以上の手順を手順通りにやらないと怒られるような。

病院というのはさぼることを想定して教えているんじゃないかと思います。人間というのは、日々のケアに関して10人いれば9人は慣れてくるとさぼる。それが普通です。さぼってもだいたいはうまく行くんです。

例えば、実際は60分挿入するのが難しければ15分や30分でも問題はないと思っています。しかし9人のうち1人くらいは、あまりにさぼりすぎてトラブルになる。この人達に対して医師は、あなたがさぼったから悪い、トラブルは医師のせいではないと免責できる。

一方10人のうち1人くらい、超真面目にケアしすぎてかえってトラブルを起こすというひとがいるんです。この人達には対しては個別のケアが必要と考えています。

ーーその考え方は衝撃的です。多くの人はこんなことできないといって塞がってしまったり諦めたりしてしまうのです。

自分が女になったのは、男とセックスしたいわけではない。だからダイレーションをしなくてもいいと言い切るMtFの人がいますが、それでいいというわけではありません。私が言っているのは「人間ならば、いつ、フォーリンラブが起きるかわからない」ということです。そのために備えておきましょう、と。

なので、ダイレーションは、深さや時間より、継続が大切です。

ーーなるほど。

それともう1つ盲点があるんです。MtFの人は、今まで腟を使っていないことです。身体に腟のある状態での、その使い方がわからない。(生まれつきの女性でも使い方がわからない人はいますが。)

生まれた時から女の子ならば子供のころから姿勢や力の入れ方をなんとなく腟の動かし方を覚えていくんです。しかし出産で骨盤底の神経障害が起こり、50%の女性は正常に動かせなくなります。それで当院では理学療法士による骨盤底リハビリテーションを行っています。

そのシステムを利用してトランスジェンダーにも骨盤底トレーニングを取り入れています。骨盤底をトレーニングすることで身体の使い方を理解したり、意識したりすることができるようになります。

ーーLUNAさんの骨盤底トレーニング用の部屋を見せていただきましたが、まるでスポーツジムのような部屋もあって驚きました。

そうなんです。患者さんが増えてきまして、さらに4月から専任の池袋先生によるトランスジェンダー外来を始めました。

SRS後だけでなくホルモン治療やそもそも性別の悩みであったりもお受けしています。

話を聞いた人

医師

関口由紀

女性医療クリニックLUNAグループ理事長

女性医療クリニックLUNAグループ理事長。2005年に横浜元町女性医療クリニックLUNAを開院。現在は横浜元町で、50歳未満の女性向けクリニック女性医療クリニックLUNA横浜元町と、50歳以上の女性向けクリニック女性医療クリニックLUNAネクストステージを主宰。トランスジェンダー外来は、ネクストステージ内で、池袋医師と関口理事長が担当。女性誌をはじめメディアでも活躍中。モットーは、90歳まで人生の現役を、みんなでめざしましょう。

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