「発達障害って診断されたけど、手帳は持っていない」
「なんとなく生きづらい。でも周りにはうまく説明できない」
私はそんな“グレーゾーン”ともいえる立場で育ち、社会に出て働いてきました。
学習障害に加えて、注意が散りやすい・確認癖が強いといったADHDの傾向もあります。
この記事では、私自身の経験と工夫を通して、「自分らしい働き方ってどんなものか」をお話ししていこうと思います。
診断を受けても“普通の子”として扱われた私の過去
子どもの頃の私
幼い頃から、人混みや視線が大の苦手でした。
小学1年生の頃、日直でクラス30人の前に立つだけで怖くて泣いてしまったこともよくあります。
でも、性格は明るくてハッキリしたタイプ。
たとえば、下校中に喉が渇いたら、近所のインターホンを押して
「喉乾いてしまったので、お水いただけませんか?」と普通にお願いしてしまうような子でした(笑)。
今の時代では考えられませんね。

特別学級との出会い
小学校に入って間もなく、担任の先生が何かに気づいたのか、私は半年以上“ひとり”で特別学級に通うことになりました。
専任の先生と一緒に、塗り絵をしたり、積み木を使って会話をしたりする時間を過ごしました。
たとえば、バナナの塗り絵で私が真っ赤に塗ったら、先生が「なんで黄色じゃないの?」と聞いてきました。
私はあっけらかんと「バナナは赤じゃダメなの?」と答えました。
そんな、ちょっとズレたように見える発想は、当時から私の中では“自然な感覚”でした。

授業でつまずく理由が「知識」ではなかった
小学校2年生の算数の授業。
時計の読み方を習っていたとき、「そもそも、なんで時計は右回りなの?」や、時間の概念に対する疑問が浮かび、先生に質問しました。
でもその問いは“学びの進行”を止めてしまったようで、先生は困ったように苛立っていました。
「勉強が苦手」だったというより、私は「なんでそうなるの?」という理由や意味が気になって仕方がないタイプでした。

創造性が力を発揮した場面も
一方で、創造する力は昔から強かったと思います。
小学3年生のときには、地球環境を守る子どもたちの物語を考え、画用紙に絵を描いて秋の発表会の舞台企画として提案しました。
先生がその内容を採用してくれて、私は“作者・総監督・衣装係”としてクラスの舞台発表をリードしました。
記憶はあいまいですが、とても楽しかったことだけはよく覚えています。

わかってもらえない「わからなさ」
学生時代、私は勉強をサボっていたわけではありません。
でも、何度やっても内容が頭に入らず、覚えたはずのことがスッと抜けてしまう。
黒板の前に立つと、緊張しているわけでもないのに、さっきまでできていたことが出てこない。
最初は「大丈夫だよ」と言ってくれた友達も、次第に呆れるようになり、先生からも「なんでできないの?」「何回教えた?」と言われることが増えました。
努力が報われない経験が積み重なって、いつの間にか「勉強が怖い」と感じるようになっていました。
こういった「覚えたはずのことが抜ける」「言葉がすぐに出てこない」といった症状は、学習障害に加えて、ADHDに含まれる“ワーキングメモリの弱さ”や“注意のズレ”の影響もあったのだと、今ならわかります。

辛い小学6年生時代を支えてくれた先生とのツーショット
精神科で出会った“診断”と“判断”
中学に入り、同級生も高校受験に向けて意識が強くなる中、不安が強くなった私は、精神科を受診しました。
結果として、学習障害(LD)などの診断を受けることになりました。
そのとき、先生からこう言われました。
「勉強では困っているけれど、生活はなんとかなっている。
自分の考えをちゃんと伝えられるし、手帳を持つことで進学や就職が不利になる可能性もある。
あなたの場合は、持たないほうがいいと思う。」
まだ子どもだった私も、それを聞いて「たしかにそうかも」と納得しました。
たしかに、生活全体に支障があるわけではなかったし、
“選択肢を狭める”ことへの怖さも感じていたからです。
その結果、私は診断はあるけれど手帳は持たないという形で今に至ります。
「AB型だから変わってる」と言われて終わったことも
ちなみに私はAB型です。
子どもの頃から「ちょっと変わってるよね〜」とよく言われました。
でも、当時はそれを「血液型のせい」として片づけられてしまうことが多くて、
本当は“困ってる”という気持ちに気づいてもらえなかったことも、地味につらかったです。
おわりに
診断名があっても、手帳がなくても、
生きづらさや困りごとは確かに存在します。
でも私は、自分の感覚・創造性・行動力といった強みを少しずつ活かせる場を見つけ、
“私らしい働き方”を模索しながら、今も前向きに働き続けています。
このシリーズでは、今後
・社会に出てからぶつかった見えない困難
・日々の工夫や自分を守るコツ
・同じような立場の人へのメッセージ
などを少しずつ書いていきます。
「これって私だけじゃなかったんだ」と感じてもらえたら嬉しいです。
次回予告
「“忘れ物が多い大人”が社会でどうやって働いているか」
〜気をつけてること・やっている工夫 編〜