性別適合手術(SRS)をする際に、どの病院を選ぶのかというのは私たちにとって永遠のテーマです。基本的には2回以上手術を受けられませんし、そのため他院と比較ができず、善しあしがわかりません。そしてデリケートな問題のため人と比較も難しい。
今回は、タイSRSガイドセンターの加地茜さんにホントのところを聞いてみました。
(過去に山梨大学の百澤明医師に話を聞いた記事はこちら)
(聞き手:NAO 取材日:2024年10月5日)
(乙女塾編集部、以下略)ーーこの間、SNSで話題になったのが「スポーンクリニックは日本人はありがたがるが特別に高いだけの価値がないんじゃないか?」といったものです。乙女塾の西原さつきはスポーンでの施術を「良かったしかない」と大絶賛しているのですが、実際のところどうなのでしょうか?
(加地茜@タイSRSガイドセンター)スポーンクリニックで行われている特別な技術「スポーンクリニック」についてはご存じの方が多いのですが、スポーンクリニックが外性器の形状をうまく作る技術だと勘違いされている方がいると思っています。
ーースポーンテクニックとは「深さ15cm」をだれでもキープしますよ、というものですよね?睾丸摘出していたり、陰茎が短くても問題ございません、という。
はい。その認識で問題無いです。「睾丸摘出をしていても最低15cmの深さの膣を造る技術」=「スポーンテクニック」になります。
術式的には「陰嚢皮膚移植法+鼠径部皮膚移植」になりますね。陰嚢の皮膚に余裕がなければ、鼠径部の皮膚移植をすることで深さを得ます。デメリットとしては「V字の傷が増える」と言う事になります。ただ、睾丸摘出前の場合は、睾丸周りの精巣鞘膜(しょうまく)を膣の最深部に使い、膣の深さを稼ぐ、と言う事もやっています。
ーー人によってはスポーンクリニックの技術は他と一緒じゃないか?と指摘する声もありました。
「スポーンテクニック」は門外不出のため、他では得ることができません。
ーースポーンクリニックと言えば、もう1つ公式サイトでは「濡れることができる」ということを売りにしています。一方、タイSRSガイドセンターさんの公式サイトでは「濡れることはない」と記載されています。これはどういった認識の違いなのでしょうか?
スポーンクリニックが「濡れる」と定義しているのは、SRS後に渡される英語の術後ケアブックに記載があります。
膣内膜とした陰嚢は、エストロゲンを非常に吸収します。そのためホルモン治療で摂取したエストロゲンはある程度、膣内膜から分泌されます。手がしっとりしているような状態です。
また、カウパー腺または尿道球腺を残してSRSをしますから、性的興奮を得ると尿道から分泌されたものが性交渉の際に無色の薄い潤滑液となり膣に入ります。
これは、一般的な性別適合手術(陰茎切除や陰嚢切除のみでない)であれば、他の病院でも同じ現象が起こります。
濡れるとは、性的に興奮された際に膣内に分泌物を出すことだと思います。私たちタイSRSガイドセンターが"膣の中"が、濡れることが「ない」と記載しているのはそうした理由からです。
ーーそうなると、個人差が大きそうですね。S字結腸だと常に濡れているみたいな言われ方をする人もいますが、術式の違いはいかがでしょうか?
ケアブックでは「個人差が大きい」ともスポーンクリニックは述べてもいます。
術式による違いですが、S字結腸だと「ナプキン必須」みたいな方は、結構少なめです。(S字結腸で作った膣は)ほとんどが「常に少し湿っている」感じです。なので、(術式によらず)性交渉の際は、潤滑ゼリーは原則必須と考えてもらっています。
ーーSRSの際に重要な項目には、感度もあります。センシティブなのでなかなか話を聞けませんが、実際医師側のテクニックで変わることがあるのでしょうか?
個人差の方が大きいです。性別適合手術では精嚢や前立腺は除去しません。ですから、手術前の男性器+前立腺の感度に依存すると考えられています。手術前からあまり感度が無い方は、術後も微妙だと見られています。
あと、包茎の方は、術後に一時的に感度が高くなる事がありますが時間経過で落ち着くので、術後に感度が良くなる、と言う事は通常ないと言われています。
ただし、メンタルや気持ちの影響は別です。
ーー最後に、外観の問題があります。見た目は百澤医師は「医師の腕もあるが材料の個人差が大きい」と申しておりました。タイでの捉え方はいかがでしょうか?
はい、結局はもともとの素材で術後の出来が決まるので、病院による大きな違いは無いと思います。
ーー感覚になってしまうのですが、スポーンクリニックの方が外国人ぽい出来、ガモン病院の方がアジア人ぽい出来と言う人がいますが、どうでしょうか?
スポーンクリニックにしてもガモン病院にしても外性器の作りは、一般的なやり方を踏襲しています。ただし、ガモン病院はアジア人らしい外観を意識した作りにしている、スポーンクリニックはその人ならではの形ではなく画一的な仕上がりになる、という感覚があります。
もちろん「画一的」と言うのは悪い意味ではありません。他の病院だと出来にばらつきがある場合があり、私たちがアテンドをおススメしない場合があるからです。
ーーありがとうございます。そのあたりは2000年代には症例写真が結構あったと思うのですが、今は全然なくて。医師会側の規制があるのかもですが、逆に実力差や好みが見えづらくなってしまった気がします。
ガモン病院では今も症例写真が見ることができます。ただし、(日本もそうですが)症例写真は表には掲出されなくなってきています。もちろん、タイSRSガイドセンターにお問い合わせいただければ、症例写真をお見せすることができます。
ーーデリケートな問題にお答えいただきありがとうございました。
岡山県出身の30代、好きな生き物はカエル🐸。2017年3月から正式なアテンド・スタッフになりました。 実際にガモン病院で手術を受けたことのある、顔の女性化と声の女性化そしてSRS経験者です。 SRS経験者から直接話しを聞きたい方は、この機会にお申し込みいただけると嬉しいです。