トランスジェンダー女性にとって女性ホルモンを使った治療はとても大事に思っている人が多いです。
その中で、定期的な血液検査でエストラジオールの値が高いか低いか、テストステロンの値が高いか低いかで一喜一憂するケースもあるでしょう。
中には、エストラジオールの値が思いのほか高くない場合に、女性ホルモンを大量に飲んだり、エチニラ、スーシー、プロセキソールといったエスニルエストラジオール製剤に手をだすものはいます。
自由が丘にあるちあきクリニックの松永千秋先生に聞いたところ、「エチニラやスーシーなどのエチニルエストラジール製剤は、効果が実感しやすいため利用され方が多くいるようですが、エチニルエストラジオールは、血液検査のエストラジオールの値に反映されません。そのため、エストラジオール値が低いために量が少ないと誤解し大量に摂取し、血栓症のリスクが高くなることがあります。エチニラやスーシーなどは血栓症のリスクが高いことを知っていただきたいです」とのことでした。
トランスジェンダー女性にとって1日でも早くより女性らしくなりたい気持ちはよくわかります。しかし、健康を損なっては元も子もありません。
エチニルエストラジオールは血液検査のエストロゲンの値は反応しない。この事実はあまり知られていないと思いますので、ここに注意喚起させていただければと思います。
話を聞いた人
精神保健指定医、精神科専門医、医学博士
松永千秋
ちあきクリニック
東京都出身。早稲田大学で物理学を学んだのち、研究室の教授のすすめで医学の道に転進。自身が性別の問題に悩んだことから精神医学を志した。浜松医科大学大学院を終了後、米国国立保健研究所(NIH)より奨学金を得て、NIHおよびジョンズ・ホプキンス医科大学で研究生活を送る。帰国後は浜松医科大学精神科講師、病棟医長、外来医長等を経て、2003年4月より日野病院副院長。2012年10月にちあきクリニックを開設した。特技はボート競技で、2人乗りのダブルスカルという種目で全日本選手権準優勝の戦績がある。早稲田大学在学時に大隈記念奨学金が給付された。