観る人によって感じ方が変わる? 映画『鏡をのぞけば』に込められた「立場を超えた相互理解のかたち」

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    乙女塾

6月17日と18日の土日、映画『鏡をのぞけば 〜押された背中〜』の上映会を観に、江東区の総合区民センターへ行ってきました。

中くらいの会議室を会場として、およそ30人ぐらいの人が来ていましたが、ほとんどが女性(トランスジェンダー女性含む)だったように感じます。

本作品は、「トランスジェンダー女性の監督が、トランスジェンダー女性に脚本を依頼して作られた初めての作品」なのです。そのため、当事者じゃないと分かりにくい「性別移行中の悩みや、よくある気持ちの揺れ動き」が、劇中にきちんと描写されていました。いわばこの映画は、小冊子「トランスジェンダーのリアル」の映像版という位置づけともいえます。

ストーリーは占い師の営むカフェに、とある来客が訪れるところから始まります。訪れたその子は、自分が「ノンバイナリー(男性にも女性にも当てはまらない、当てはまりたくない立場)」であり、その子が友達の男の子を連れてきたのです。

占い師は、すぐにその男の子の性別違和感に気がつきます。なぜなら占い師自身も「トランスジェンダーであることを周囲に明かさずに生きてきた」当事者であったから。 占い師は男の子に「わたしの言うとおりにすれば、すぐにでも女の子になれるわよ」とアドバイスを送ります。しかし男の子は「そういうことじゃない」と拒絶します。

占い師は拒絶されたことをきっかけに、自分自身の置かれている現実を見つめ直します。その結果、自身が「トランスジェンダーであること」をみんなにカミングアウトして、オープンに生きようと決心します。

一方、カフェを訪れた男の子にも心境の変化が起こります。 占い師とのやりとりに少し背中を押されたのか、気持ちを切り換え、自信がなかったメイクをして再びカフェにやってくるのです。

この映画には、観る者の立場によって「それぞれの受け止め方がある」と感じます。当事者にとっては「自分自身の今の性別移行ステージ」としての見方ができ、「アライ(当事者でなくても、当事者を支援する立場)」には「アライの立場からの視点」があります。

そして、「性別違和があったなら、必ずこのルートで移行をしないといけない」「何歳までにしないと遅い」「移行が進んでいるほうが偉い」といった暗黙の雰囲気に対し、警鐘を鳴らしているとも感じました。

自分の移行状態を理由に、他人にマウントして喧嘩になったり、

他人の移行状態でマウントされて、傷ついたり……

ネットや知人から、このような悲しいやりとりで傷ついてしまう人が現実にいます。

わたしも毎日のように、そんな場面に出くわします。

でも、ここで忘れてはいけない「大切なこと」があります。
別にわたしたちって、なにも「出世魚」じゃないはずなんです。

その時の自分に合った気持ちで、「進めたり、立ち止まったり、場合よっては戻ったりすればいいんじゃないか」って思います。

みんなそれぞれだし、その時々のペースやタイミングがあるんだと。

だからこそ、「当事者もそうでない人も、仲良くできればいいな」って、改めて感じたいい映画でした。

今後は兵庫県の淡路島で上映されたあと、全国を回りながら上映するとのこと。

ネット配信も計画中とのことですので、見逃してしまった方も期待して待ちましょう!

『鏡をのぞけば 〜押された背中〜』公式ホームページ:https://kagamiwonozokeba.wordpress.com/

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