NHKで放映「イギリスのトランスジェンダーの現状」

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4日、NHK(Eテレ)ドキュランドへようこそ内で「トランスジェンダー イギリス 若者たちの選択」が放映されました。

海外のトランスジェンダーの話はあまり入ってきません。しかし、番組内で描かれていたイギリスの現状は考えさせられるものでした。


(見逃し視聴はhttps://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2022030428857から)

以下、乙女塾開発メンバーのみなみさんによる解説をお届けします。ネタバレも含みますので怖い方はブラウザの「戻る」ボタンでお戻りくださいませ。

イギリスのトランスジェンダーの現状

番組内で取り上げられていたトランスジェンダーのアレックスさんは17歳、しかし初診は30か月待ちです。

イギリスではトランスジェンダーのホルモン治療を含む性別移行治療には次の3つの選択肢があります。

・国民保険サービス(無料かきわめて少額)
・民間診療所(自費治療)
・自己治療(ネットでホルモン剤を手にいれるなど)

国民保険サービスは私の調べでは無料か極めて少額で国家予算のうち約25%が使われるなど素晴らしい社会保障です。しかし、国民保険サービスのジェンダークリニックを受診するには、2年から4年待ちという現状があります。

それは何故か?イギリスではまずは家庭医(総合診療科や町のかかりつけ医の意味)にかかり、その後専門医にかかるというやり方のためです(日本の大学病院を想像するとよいでしょうか)。

その間の待ち時間が長いことは、第二次性徴や男性化(女性化)を懸念するトランスジェンダーも少なくないと感じました。

そのため、金銭的に余裕がある人は民間診療所をつかいます。こちらは自費診療なので高額になります。イギリスの物価が高いこともあり日本の倍程度の金額がかかる計算です。

自己治療は日本と同じです。例えば、ECサイトでホルモン剤を購入し自分で服用します。これでは血液検査や摂取量の管理がないので肝臓への負担などのリスクがあります。

国民保険サービスでは、16歳までは二次性徴抑制剤のみ処方されます。二次性徴抑制を1年続けた16歳以上の子はホルモン治療がうけられることになります。しかし、自己治療でフライングしてる場合、成人扱いになるので、成人向け国民保険サービスを受診するため、また2年ぐらい待つ必要があります。つまり、何にせよ正式な手順を踏むには長い時間がかかります。

このような現状もあり、イギリスの未成年トランスジェンダーの49%は自殺未遂をしています。

イギリスではこの状況を改善するため、3箇所で実験的に国民保険サービスがかかりつけ医にジェンダー診療をできるように指導して、待ち時間を減らす試みをしています。推定で2万人が待ってる状況だそうです。

ところが、ここで問題が生じました。性別移行後に性別を戻したくなったというケースもあったためです。性別移行をおこなってから、やめる子の割合は1%程度しかありません。番組では性別を戻したい人は敵ではない、と表現していましたが。

しかも、2020年12月、(裁判も起きた影響で)病院での新規受付は一時的に止められてしまいました(その後控訴)。治療を早く開始したい人にとって辛い状況です。

それでも少し前向きな状況もあります。2021年に、子供に変わり親がホルモン治療の承諾をすればよいように変更がありました。また、国民保険サービスは継続的な需要の高まりに合わせてジェンダー医療への需要に対応するために予算配分を拡充しつつあります。

海外で治療を選択するケースも増えているそうです。例えば、およそ110-140万円程度かかるFtMトランスジェンダーの胸オペの手術はポーランドでは約50万円程度で受けられるからです。

それでも、50万円という金額は安くはありません。多額の費用をかけて治療を行うのは、日本も世界も変わらないようです。

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