トランスジェンダー女性はアスリートとして有利なのか?「ファクトチェック」を見る

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ドナルド・トランプがアメリカ大統領になって以降、トランスジェンダー女性への締め付けは強さを増しています。とりわけ、アスリートの分野では「トランスジェンダー女性を女性枠に認めない」とし、大きな波紋を生みました。

実際に、トランスジェンダー当事者でも、トランスジェンダー女性が運動競技に参加する際には男性・女性どちらで出場すればよいのか、それともそれ以外の選択肢を用意するべきなのかは意見が分かれています。

「オープン参加が良い」というものもいれば、「むしろ男性枠でチャレンジしたい」という方もいらっしゃいます。

そんな中、『DW.com』は3月20日にファクトチェック「トランスジェンダーの女性は不当に運動面で有利なのでしょうか?」を更新、そこには客観的なデータに基づいた意見が述べられていました。

今回はその中で大事な部分を翻訳しながら日本での意見を交えて紹介します。

トランスジェンダー女性は女性よりも優れている?

ほとんどのスポーツでは、男性と女性が別々に評価されます。これは、2023年の科学者の共同声明によると、「持久力、筋力、スピード、パワーに依存する運動競技やスポーツでは、性染色体と思春期の性ホルモン、特にテストステロンによって決まる根本的な性差により、男性が女性よりも優れていることが多い」ためです。

ホルモン療法を受ければ、トランスジェンダー女性とシスジェンダーの女性との違いは軽減されます。

「しかし、それでも第二次性徴を迎えた場合には利点があるのではないだろうか?」という点がよくSNSで指摘されています。

2024年にBritish Journal of Sports Medicine に掲載された研究では、参加した23人のトランスジェンダーアスリートの絶対的な握力(少なくとも1年間のホルモン療法後)は、参加した19人のシスジェンダー男性よりも低かったが、参加した21人のシスジェンダー女性よりも高かったそうです。握力は全体的な筋力の指標と考えられています。

引用:https://www.dw.com/en/do-trans-women-have-an-unfair-athletic-advantage/a-58583988

参加したトランスジェンダーの女性は、絶対最大酸素摂取量や除脂肪体重指数などのパラメータでも優位に立ちました。しかし、例えばダッシュからの垂直跳びなど、いくつかの点ではシスジェンダーの女性よりも成績が悪かったのです。つまり、トランスジェンダー女性だから優れている、劣っているといったものではなく複雑さがあります。ですから、トランスジェンダー女性=女性よりも強いとして、“予防的”に除外することは注意するように著者は警告しています。

とりわけ、背が高く、体格も大きい一方で英国ラフバラー大学の医療物理学者ジョアンナ・ハーパー氏は「ホルモン療法を受けた後、トランスジェンダーの女性は有酸素能力と筋肉量が減った状態で体を動かしている」 と指摘しています。

女性的になった筋肉量と有酸素能力で大きな体を動かすことになり、スピード、回復、持久力 の面では不利になるのではないかとみられています。

また、トランスジェンダーの人々は精神状態が悪化することが多いことも指摘されています。メンタルは、「運動能力の要素」として大事なことの1つです。

ホルモン療法2年後に大きな効果?

ミズーリ大学カンザスシティ校のティモシー・ロバーツ氏とその同僚による2020年の研究では、ホルモン療法2年でシスジェンダーとトランスジェンダー女性の成績がほぼ同等になったとしています。

性別適合ホルモン療法を受けた米軍人を調査したところ、 ホルモン療法を1年間受けた後では優位であった成績が、2年後には、両者の成績はほぼ同等になったというのです。

ロバーツ氏らは、一部のスポーツ協会が参加の条件として規定している1年間のホルモン療法が短すぎることを示しているとも指摘しています。

一方で、2021年、アラン・ウィリアムズ氏と英国スポーツ運動科学協会の他の研究者らは、入手可能な科学的証拠によれば、ホルモン療法は2年経っても男性の優位性の一部しか失わないという結論に達しました。両方の研究では、結果が反対に出ています。

第二次性徴を迎えないという非現実

一方で第二次性徴前にホルモン療法を行うことを参加条件にあげている競技もありました。しかし、これは非現実的です。思春期前に性別適合手術を受けていないアスリートがほぼ100%だからです。

ところが、思春期前でも男女差があるのではないか?という研究があります。2024年に発表された研究で、ネブラスカ大学のスポーツ科学者グレゴリー・ブラウン氏と英国エセックス大学の研究者らは、8歳以下と9歳と10歳の児童を対象に、100メートル、200メートル、400メートル、800メートル、1500メートルの競走種目のほか、砲丸投げ、やり投げ、走り幅跳びにおけるパフォーマンスを分析しました。

その結果「男子は女子より速く走り、男子は女子より速く投げ、男子は女子より速くジャンプしていました」とブラウン氏は言います。「ランニングについて3~6%、走り幅跳びでは5%前後、投てき競技では20~30%の男女差がありました。」 これは、Y染色体が男性の発達と生殖に関する遺伝子を多く含んでおり、その影響かもしれない。

この結果は、男性としての思春期を経験していないことが十分であるかどうかについても疑問を投げかけています。

このように現時点では、意見は多岐にわたっています。 ハーパー氏は、科学はトランスジェンダーの女性を女子競技から締め出すべきだとは示唆していないと説明しています。 「スポーツには100%公平などありえない」と彼女は語ります。「生まれつき才能に恵まれたアスリートもいるのに、それほど才能に恵まれていないアスリートがそういう人たちと対戦するのは公平なことなのだろうか?」「スポーツは本質的に不公平です。しかし、スポーツをカテゴリーに細分化するのは、生物学的な違いがスポーツに求めるものを圧倒しないようにするためです。例えば、大柄なボクサーは小柄なボクサーに対して非常に有利なので、小柄なボクサーが勝てるように、そのスポーツを体重別カテゴリーで分けるのです」と語っています。 特に有利に働く競技とそうでない競技があり、射撃やダンスでは男女差はそこまでないのではないかとしています。オランダのトランスジェンダー女性ノア・リン・ファン・ルーベンは、2024年世界ダーツ選手権で同胞のケビン・ドーツ(シスジェンダーの男性)と対戦しました。この大会では性別は関係なく出場できます。 今後、競技ごとでどのような回答になるのか見守っていきたいと思います。

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