トランスジェンダーは移行しても家族に似る? どう受け止める?

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あなたは顔や性格が「家族に似る」ことを、どのように受け止めていますか?

実は、MtFトランスジェンダーの方で、メイクをして髪を伸ばしたら「母親の若い頃や姉・妹に似ている」と感じられる方が多いのです。

そして、「似ている」と感じることについて、「好意的に思う方」「そう思えない方」の2種類がいらっしゃいます。

あなたはどうでしょう?
トランスジェンダーに関係なく、思春期のころに「親きょうだいとの関係」の中で、それぞれ多様な思い出や受け止めを経験なさったのではないでしょうか。

家族と似るのは「うれしい」? それとも「イヤ」?

乙女塾に通われる方で「好意的に思う方」は、やはり「血のつながりを感じる」「自慢の母(姉)だったのでよかった」という意見をお持ちです。

一方で「そう思えない方」の意見からは「母親や姉の影がちらつくのは…」というものも多くありました。

メイクレッスンの場でも、はじめてメイクをする方で「母に似ている」「姉妹に似ている」という感想を述べられる方が多いと、レッスン担当のNAOからも報告されています。

「異性の家族」は異性ではない?

また、「母や姉妹は「家族」であって、「女性」として意識していない」といった方が多いのも事実です。 しかしそれは、ご本人の不安につながるという一面もあります。
なぜなら、「(自分から見て)女性に思えない人に似ている」ということは、「家族に似ている限り、女性的になれていない」というネガティブな印象につながりかねないためです。 そのような心理から「家族に似ることは、必ずしも好意的なものばかりではない」といったお悩みにつながるのです。

そんなとき私たち乙女塾は、このようにお声かけしています。 「家族だって他人から見たら女性なのだから、自分が女性に見えているということは安心してほしい」と。 あなたは少しずつ「あなた」として一歩を踏み出しているのです。

「近くて遠い」家族とあなた

「家族」という「近くて遠い、複雑な人間関係」は、その方の心に広く深く影響しているものです。
一例として、思春期の多感な時期に、家族との関わりが変化する際にも起こります。 幼いころは「家族と似ている」ことが一体感や安心感を生んでいたのに、ふとした時から疑問を抱くことになります。
それが「親の子」という繭から出て、「他の誰でもない、ただひとりのあなた」として羽ばたくための思春期のステップなのです。

多感で不安定で傷つきやすい時期の体験は、本人に思いのほか深く記憶されるものです。
例えば、「似ている」ことで「私はいつも家族の添え物」「ただの自分としてみてほしい」と、個性が埋没しないように「違い」を求める方がいらっしゃいます。
その一方で、家族と「似ていない」ことで、「私は家族とは違う」と感じたことがある方は、似ていることが「認められた」と感じることもあるのです。

「適切な配慮」は人の数だけある

育児や教育には「こうしておけばいい」といった、固定的な正解は存在しません。 どれだけ他のお子さんでうまく噛み合った方法も、別のお子さんにはまったく噛み合わないという事態が起こるのです。 「目の前のお子さんにとってベストな対応をすること」と、多様化した社会での「目の前の他者への配慮」には、共通点がたいへん多いのです。

このように、もともと家庭内や個人レベルで発生していた「個々の多様性によるトラブル」を「家庭内の問題だから」と放置し続けてきた結果でもあるといえるのではないでしょうか。

それがようやく「個人の問題」ではなく「社会の課題」として取り組む動きにようやくつながってきたのです。

メイクレッスンを受講される方の中には、家族の面影を減らすことを重視する方もいらっしゃいます。 そういった方は、どちらかというと元の自分から大きく変わり、いわば「変身」することに重きを置くメイクをすることで、悩みの解消や理想の実現を目指すことにつながるそうです。

当事者だけじゃない? 家族関係の悩み

では、FtMトランスジェンダーは父親や兄弟に似るのでしょうか? それとも、本人がマイノリティかどうかに関係なく、家族と人間関係など環境が与える影響の方が多いのでしょうか。

そもそも「家族」とは、いったいどのような関係をいうのでしょうか?
家族社会学を研究した社会学者の森岡清美氏・望月嵩氏によると、家族とは

「夫婦・親子・きょうだいなど、少数の近親者を主要な成員とし、成員相互の深い感情的かかわりあいで結ばれた、第1次的な幸福追求の集団」

引用: 森岡清美・望月嵩 1997 あたらしい家族社会学[四訂版] 培風館

と、このように定義されています。

裏を返せば、家族との深い心のつながりが築けずに、お互いの幸せが共存できなくなっている場合に、トラブルが起こりやすいのではないでしょうか。

マイノリティ「だけじゃない悩み」にも

いわゆる一般層の方々も、家族関係がうまくいっていないことでお悩みの方も多くいらっしゃいます。 近年話題となる「毒親」「虐待」「親ガチャ」なども、無関係ではないと考えています。 社会の急激な変化によって、その対応が間に合わない家庭環境がしわ寄せを受けてしまっているのではないか。

価値観が多様化した社会だからこそ、サポートを受けられずに取り残される方が増えてしまう可能性も生まれてしまっているのです。
このジレンマの中で、乙女塾は受講される方とレッスンを通じてお悩みに寄り添う中で、「受講してよかった」と感じていただけるような環境をご用意してまいります。

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